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 新社会党
2011年1月18日

  JALが再建に逆行
    165人を整理解雇  ─撤回へ広範な闘い


大晦日の解雇が迫るなか、撤回を訴える日航の労組員
=2010年12月24日、東京・有楽町マリオン前
 会社更生中の日本航空は昨年12月31日、パイロット81人、客室乗務員84人、計165人の解雇を強行した。「整理解雇」という名の「指名解雇」である。

 客室乗務員で組織する日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)は、「お客様の安全に責任と誇りを持って働いてきた社員に対する『整理解雇』はJALの再建に逆行する」として、「整理解雇撤回」の闘いに突入した。

 昨年1月、日本航空は負債総額約3兆3000億円を抱え、会社更生法が適用されて国の管理下に入った。その前年、企業年金減額から経営危機問題に火がついた頃、国労組合員の坂田秀行さん(仮名)は山崎豊子の『沈まぬ太陽』を貪り読み、「国鉄と同じだ」と怒りを新たにした。

 会社の不条理な労務対策で海外勤務を転々とさせられる主人公に、国鉄分割・民営化攻撃により北海道から広域採用を強いられたわが身を重ねた。

 乗員・乗客520人の命を奪った1985年8月12日の日航機123便事故(御巣鷹山事故)も、この本の重要なテーマ。当時、日航は完全民営化へ漕ぎ出していた。

 一方の国鉄は民営化19年目の05年4月25日、死者107人、重軽傷者549人のJR西日本福知山線脱線事故を起こした。

 国鉄入社以来、「安全は輸送の第一の使命」と叩き込まれてきた坂田さんには、営利・効率化優先と差別・分断の労務政策は「安全性・公共性」の最大の敵だった。

 御巣鷹山事故の体験からCCUは、「安全運行のための保安要員」としての役割を心に刻みつけてきたベテラン揃い。安全・安心な日本航空の再建に欠かせない人ばかりだ。

 国鉄も日航も「親方日の丸体質」が批判された。国鉄は「ヤミ・カラ・ポカ」、日航はパイロットらの人件費の高さ。その元凶として労働組合が叩かれた。赤字の責任を労働者に転嫁する手法は国鉄と同じだった。

 しかし、経営破綻の内実は国鉄と日航は違うようだ。国鉄の場合、JRに移行する87年度の長期債務は37兆3000億円、資産(簿価)8兆9000億円。有効需要喚起に年々2兆円の設備投資が行われていた。だが、資産の時価評価は50兆円とも70兆円ともいわれ、債務を上回っていた。

 この偽装の上に分割・民営化が強行されたのは、「国労の崩壊、総評の衰退、社会党の退潮に拍車をかけて、55年体制の終末に導く」(中曽根康弘『内省録』)という政治的意図があったからだ。

 他方、日航は差別・分断の労務政策に加えて『沈まぬ太陽』のリアルさが嘘のような「乱脈無責任経営」が続いた。関連会社と一体で日航を蝕んだ腐敗。為替と燃油のドル先物買い、ホテルリゾートの乱開発、鶴丸羽根布団疑惑、政界・マスコミ接待のためのCF(営業用割引)券疑惑、貨物専用子会社やシャトル運行子会社開設、ゴルフ会員権購入、行政指導によるジャンボ機113機購入、必要以上の空港建設に伴う不採算路線への運行継続―。
 日航は経営陣と御用組合の私利私欲の場、政財官の利権争いの場となった。

 御巣鷹山事故後、日航の 「体質改善」は1年で失速し、「バブル経営」が復活する。『沈まぬ太陽』の舞台となった当時の首相は、中曽根(82?87年)である。彼の『内閣史』には、御巣鷹山事故の教訓は政府の危機管理の不備とあるだけだ。

 闘いは引き継がれる―。坂田さんは決意を新たにした。



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