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 新社会党
2011年12月6日

   アスベスト被害 
    最高裁が団交を認定  補償制度の充実に光


 
在職中のアスベスト被害をめぐり、退職者の団体交渉権を認めないとした兵庫県労働委員会の決定について、11月10日、最高裁(宮川光治裁判長)は県と住友ゴムの上告を退け、退職者の団交権を認めた大阪高裁判決が確定した。

 事件の経過

住友ゴム前でNHKの資材を受ける組合員
 2006年10月、住友ゴムの元従業員と遺族が「ひょうごユニオン」に加入し、住友ゴムに対して、企業補償制度の創設などを求め、団体交渉を申し入れたが住友ゴムは「従業員でない」と拒否。ユニオンは、兵庫県労働委員会に不当労働行為の救済申立を行ったが、07年7月、県労委は、「雇用する労働者ではない」として申立を却下した。

 ユニオンは07年12月、県労委命令の取消しを求め神戸地裁に提訴し、08年12月に神戸地裁で退職労働者の団体交渉権を認める全国初の司法判決を勝ち取った。

 県労委は控訴したが、大阪高裁は控訴を棄却。さらに最高裁へ上告したが、11年11月10日、これを棄却し、大阪高裁判決が確定した。

 ユニオンが住友ゴムに対して最初の団体交渉を申し入れてから5年が経過した。この判決は、全国のアスベスト被害者、遺族、元従業員にとって待ち続けた判決である。

 
退職者に大きな力

 アスベストによる疾病は、それを吸い込んでから30年?50年もの長い潜伏期間を経て発症するため、圧倒的多くの被災者は、退職していることが多い。また、本人が死亡していることもある。遺族が、夫のアスベスト曝露の実態を立証するのは困難を極める。

 訴訟となれば、解決に長時間を要す。時効の問題や証明責任など、被害者側の負担があまりにも多く、その結果、被害者であるのに「謝罪も補償もされない」可能性が高くなる。予後の悪いアスベスト疾患の患者・家族にとって二重三重の負担が強いられるのだ。

 会社側が「団体交渉ではなく、民事訴訟でやればよいではないか」という理由は、そうしたことを見ているのである。それに引き替え、団体交渉には裁判にない柔軟性がある。退職者にも団交応諾義務を認めた最高裁の決定は、アスベスト被害を受けた退職者に大きな力を与えた。

 ひょうごユニオンやアスベストユニオンが、アスベスト被害者の問題で交渉を申し入れてきた企業は数十社にものぼるが、そのほとんどは交渉で解決してきた。ホンの一部の企業だけが責任を認めようとせず、ユニオンや退職者、遺族に背を向けてきたのである。

 現在、同様の事案が中労委や各地の労働委員会、そして裁判所で係争中であるが、今回の最高裁の決定がこれらの訴訟等に与える影響は必至である。

 
よりよい補償制度に

 住友ゴムでのアスベスト健康被害は拡がりをみせており、住友ゴムで労災認定された8人(遺族)全員がユニオンに加入している。住友ゴムは勝手に独自の労災企業補償制度を新設した。しかしこの制度は、補償に年齢格差がある。

 私たちは、この補償制度について世間並み水準への引き上げと年齢格差をなくすよう求めている。また、健康不安を抱える元従業員も増え、「胸膜プラーク」というアスベストでしか起こらない病変が見つかり、ますます不安は広がっている。

 最高裁の決定を受け、11月18日、分会組合員らとともに5人で住友ゴムに団体交渉の申し入れを行った。早速団体交渉を受け入れるとの連絡が入り、12月初めに第1回団体交渉が決まっている。



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