今月7月1日、香港が中国に返還されて15周年を迎えた。一国二制度も15周年ということになる。今でこそ中国本土の経済圏自体を資本主義とする見方も有力だが、返還時は、中国共産党指導部が資本主義香港をどう扱うか、大いなる実験として注目された。
中国にとって「資本主義への窓」香港は、中継拠点というだけでなく、市場経済の学習と実験の場だった。今も香港での動きを通して中国政府の意思を推し量ることができる。
『日本経済新聞』6月28日付2面は、香港当局が毎月発表する貿易統計で、中国の金(ゴールド)輸入の急増が読み取れ、市場の話題となっていることを伝えている。
昨夏ごろから香港から中国への金輸出量が増えはじめ、毎年800トンずつ増えるペースだという。昨年全世界で新たに採掘された金の生産量は、推計で2818トンにすぎないというから、中国が増やしているのは半端な量ではない。
そもそも世界の金の採掘済みの総量は約17万トン、競技用プール3つ分にすぎない。世界最大の保有国米国の所有量は8100トンあまり、日本政府のなけなしの765トンは米国ニューヨーク連邦準備銀行の地下倉庫に眠っている。
中国は昨年1年で371トンを生産したと推定されている。国際比較に耐えられる質かどうかを疑う向きもあるが、世界最大の金産出国でもあることは間違いない。さらに大量輸入して、保有量で米国に迫り、追い越す未来が見えてくる。
これは、工業用、装飾用、投機とは異なる国際通貨戦略だ。基軸通貨としてのドルの衰退、ユーロの混迷のなかで、貨幣としての金の力を踏まえている。ユーロ発足とあわせて欧州中央銀行は、外貨準備の15%を金にする方針を決めた。日本の金準備は極端に低く3%、ドルを大量に抱え込んで米国に追従するだけだ。(義)
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