ロンドンオリンピックは、女性の躍進において足跡を印す大会だった。参加した国・地域の全ての選手団に女性が参加したのも、全ての競技で女性の参加が認められたのも、史上初めてのことだ。
日本選手団も女性の数が男性を上回り、団体競技での初メダルが続出した。とりわけサッカーは昨年のワールドカップで米国を破って優勝していたから、愛称「なでしこジャパン」に対する評判も期待も、大会前からすこぶる高かった。
問題は、「なでしこ=日本の女子力」として日本経済活性化に動員しようという魂胆の方だ。『日本経済新聞』の7月23日付は、「『なでしこ』の出番です」の大見出しで紙面を割いている。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が、「未活用の、よく教育された女性労働力」は、日本の「すごい潜在成長力」と言ったとか、経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長も「女子力を生かした成長」を強調している、と紹介。
OECDは、働く女性の半数以上が非正規雇用、出世を阻む「ガラスの天井」、仕事と家庭の両立を妨げる長時間労働等々が日本の欠点、と提言する。
一方、政府の「女性の活動促進による経済活性化」行動計画の副題は「働く『なでしこ』大作戦」だが、看板だけ便乗して、実効性のある支援がないのをごまかしている。
日本サッカー協会も「なでしこビジョン」なるメダル獲得宣言を掲げてはいた。しかし、英国メディアに指摘されたのは、ロンドンへ向かう航空機、サッカー代表選手の男はビジネスクラス、女はエコノミークラスという、男女差別だった。
サッカー協会は、男はプロだからとの「コース別管理」まがいの弁。BBCは「金を期待される女子、男子は何の期待もされていません」と揶揄。メダリストとなったなでしこの帰路はビジネスクラスとなった。(義)
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