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2013.10.22

庶民に冷酷 アベノミクス 貧富二極に分裂社会


 デフレ脱却、景気回復を旗印に政権を奪還した自民党・安倍政権は、デフレ脱却に失敗すれば退場を余儀なくされる。しかも、期限付きながら無制限な「異次元の金融緩和」と大規模な財政出動による経済再生、消費税増税と社会保障費削減による財政健全化の相反する政策の両立を目指し、その政策的破綻は今からでも予測に難くない。
 アベノミクスはデフレ脱却へ緩やかなインフレ目標=2%の物価上昇を掲げている。今日よりも明日、明日よりも明後日と大衆の「期待」を煽り、ミニバブルを起こそうという奇策だ。そこへもってきて消費税増税は景気回復の冷や水になりかねない。しかし、増税は民自公3党合意に基づく国家意思。「私の責任で判断する」と引き取った安倍首相には選択幅はなく、5兆円規模の経済対策によってショックを乗り切ることになった。


 アベノミクス3つの矢(金融、財政、成長戦略)の先鞭をつけたのが金融緩和。9月20日、就任半年を迎えた黒田日銀総裁は「確かな手応えを感じている」と述べ、政策決定会合の景気判断「緩やかに回復している」を受けて「2%物価目標に向けて想定される道筋を着実に進んでいる」と自信をのぞかせた。
 景気判断の重要な指標は長期金利、為替、株価の3つ。黒田総裁が就任する前日の3月19日と9月20日の指標を比べると、10年物国債金利は0・595→0・690と低利安定、為替は1ドル=95円47銭→99円25銭と100円近傍につけた。安倍政権発足前は1ドル=70円台、円安傾向が進んだ。
 また株価(日経平均)は、1万2466円23銭→1万4742円42銭と昂進、安倍政権発足3日後に1万160円40銭と1万円台に乗せた。ピークは5月22日の1万5627円26銭、以来、1万3000円を切ったことはない。


 景気判断は、その他指標を総合的に勘案して決定されることになっていた。
 8月の全国物価指数は円安効果により前年同月比8%以上上昇、鉱工業生産指数(2010年=100)は8月はマイナス0・7%だが9月はプラス5・2%を予測。4〜6月期の民間金融機関の貸し出しは712兆円と前期比3・6%増、13年度GDP実質成長率予測は2・8%、増税で14年度は0%台、5兆円規模の経済対策で0・9%に微増(民間15社)。1〜3月期の法人企業景気予測調査では景気回復の鍵を握る設備投資の優先度は大企業の場合、内部留保に続き2番目となる。
 しかし、消費税増税の景気判断材料はこうした好材料ばかりではなかった。
 8月の勤労統計調査では現金給与総額は前年同月比平均0・6%減、消費支出も6・6%減。12年度の民間給与実態調査統計では非正規雇用者は1906万人(全体の36・5%)、平均年収200万円以下のワーキングプアが1090万人。労働力調査による8月の完全失業率は4・1%(前月比0・3ポイント悪化)272万人と6カ月ぶりに悪化している。


 アベノミクスによる社会の二極分裂は顕著だ。ヘッジファンド主体の海外投資家による円安・株高、日銀の信認を侵しかねない金融緩和、濡れ手に粟の大企業と労働者の貧困化。
 それでも安倍政権は消費税増税に踏み出した。財務省が送り込んだトロイの木馬、黒田日銀総裁は「国全体として財政運営に対する信認を確保することが重要。大きな意義ある判断だ」と言い切った。
 日銀は2%物価目標の実現へ、市中に出回る貨幣量(マネタリーベース)を年60〜70兆円ベースで増やし、270兆円規模のゴールを目指す。その中心策が当座預金残高を積み上げる量的緩和だ。その残高は、黒田総裁就任の3月時点で58兆円だったが10月1日には97兆円規模に拡大。消費税の8%への増税が始まる来年の末には175兆円までの積み増しが予定されている。

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