大阪市で条例案、東京でも?
東京・大田区議会議員奈須 りえ
生死に関わるライフライン、水の民営化の危機が迫っています。大阪市では、平成26(2014)年に水の民営化のためにパブリックコメントを行い、その後の議論をふまえて一部修正した案が市議会に提出され、現在、継続審議中です。
ボリビアのコチャバンバでは90年代後半、水の民営化を行いましたが、その後、水道料金が大幅に引き上げられ死傷者を出す暴動に発展し水道は再公営化するなど、世界では水道は再公営化の流れです。
にもかかわらず、2013年に麻生太郎副総理は、アメリカ合衆国のワシントンDCに本部を置く民間のシンクタンクCSIS戦略国際問題研究所における講演で日本の水はすべて民営化すると発言しています。
大阪市の水民営化審議
今、なぜ水の民営化なのでしょう。
たとえば現在継続審議中の大阪市は、 @高齢化や人口減少で、水需要が減る。 A需要に対し、施設規模が過剰。成功が見込めない。 B水道管が老朽化、要耐震化で、更新に多額の費用が必要といった理由を掲げています。
しかし、「水需要を増やす」ことや「成長が見込めないから海外の水道事業に新規参入すること」は水を使う私たちがしたいことではなく、水道事業を使って儲けたい事業者が望んでいることです。
施設規模が過剰で成長が見込めないからと、さらに設備投資をすれば、老朽化や耐震化や海外進出で必要な費用やリスクは最終的には水道料金を支払う私たちに転嫁されます。
大阪市の民営化案でも、水道料金について市民(議会)によるガバナンスの確保が必要であると指摘されていて、水道料金の上限を議決事項とすることで議会のチェックを得られるとしています。
ところが、水道料金上限の引き上げ議案を議会が否決すると、運営権者に「市の事由による」契約解除権を与えているため、議会は運営権者からの損害賠償請求を覚悟の上で否決しなければなりません。運営権者にとっては、水道料金が上がらなくても、損害賠償金を得られるという「想定した利益を確保できる」仕組みです。
政策論争できる市民運動を
水道の民営化は、水道料金が上がるといった価格だけの問題ではなく、市民や議会の関与から外れるというガバナンスの問題なのです。地域独占のライフラインである水道事業を議会の監視から外す民営化はなじみません。
かつては、23区域を中心に運営されていた東京都の水道事業ですが、今や、水の供給量に合わせるかのように、都内では武蔵野市、昭島市など数市のみを除き東京都水道局が一大給水エリアを確保しています。
都政の課題を明らかにすることなく無党派層に圧倒的な人気を誇り小池百合子都知事が誕生しましたが、小池知事の政策は政府の成長戦略アベノミクスを「徹底活用」する強硬路線です。大阪維新が与党として進めている水道の民営化は、決して対岸の火事ではありません。
来年の都議選を一つのターニンポイントと捉え、水道の民営化について政策論争できる市民運動を作り上げることがこれからの重要な課題の一つと考えています。
この間、規制緩和が国家戦略特区などで一気に進められ、自治体で民間委託、民営化が広げられてきました。「公営」「公営企業」「民営化」「民間委託」の違いを御参考までに掲げました。
水道民営化と合わせ、身の回りの民営化を見直していきましょう。
|