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2016.12.20
医療介護すすむ制度改悪
年金カット法の全容


 千葉・習志野市議会議員 宮内 一夫


 安倍政権・自公与党などは、衆議院本会議で11月29日、年金カット法案(国民年金等改定法案)を強行採決しました。
 今まで年金受給額は、賃金が下がっても物価が上昇した場合には据え置きにしてきました。しかし、年金改定法案は、@物価が上がっても賃金が下がる場合は、賃金下落に合わせて年金受給額を下げる、A物価・賃金双方が下がった場合は、下落幅の大きい方に合わせ受給額を下げる、Bさらに、マクロ経済スライド(メモ参照)は、デフレが続いたため、15年度の一回の適用だけでした。所得代替率は、14年度で62・7%に高止まりしていたため、新ルールでは減額できなかった分を翌年度以降に繰り越して、減額実施が可能になるというものです(21年4月実施予定)。


 いい加減な減額ルール試算


 厚生労働省は、野党の求めに応じて新たな減額ルールを適用した場合の試算を公表しました。その試算によると、3%減少するというもので、国民年金(基礎年金)を満額の月約6万5000円受給の人が、月約2000円減額になるというものです。 しかしこの試算は、あくまで過去の実績に新ルールを当てはめたに過ぎず、将来も賃金が上がり続け、新ルールを一度も適用しない前提で計算しており、国会審議で野党が再試算を求めたが政府は応じていません。もっと丁寧な対応が求められています。国民年金や厚生年金の積立金約140兆円の運用は、安倍政権の意向を受けて株式投資を24%から50%に倍増させています。「年金積立金管理運用独立行政法人」の15年度の運用損5・3兆円(15カ月では10・5兆円)の損の責任を取ることなく、国民へツケを回すやり方は許せません。


 老後の不安ますます深刻に


 年金受給額を低くされてしまうと、年金の果たすべき役割である高齢者の生活を支える機能は低下してしまいます。高齢者のうち公的年金や恩給だけの収入で生活している人は約55%を占めているのです。高齢者が生活保護を受けている世帯は約83万世帯(16年度)と、この20年でほぼ倍増している状況で、老後の不安が益々深刻になってしまうのです。
 安倍政権は、団塊の世代の人たちが、すでに65歳の高齢期に到達しており、75歳(後期高齢者)になる25年に向けて、医療や介護の負担増や給付減など社会保障全般の制度改悪を進めています。具体的に医療では、@ 75 歳以上が加入する後期高齢者の保険料を、最大9割軽減している「特別軽減」(916万人対象)を廃止する、A70歳以上が支払う医療の自己負担の上限(月額)を、住民税を払う人すべての約1200万人を対象に、上限特例を廃止し月1・2万円を5万7600円に引き上げる、B療養病床に入院の65歳以上の居住費320円を370円に引き上げるなどがあります。
 介護では、@利用者負担は原則1割だが、すでに年金収入が280万円以上の人は2割負担にされており、2割負担の対象拡大を拡大し、18年度から3割負担を投入したい考えを社会保障審議会に示しています、A18年度から、要介護1、2の生活援助、福祉用具貸与などを保険給付から除外することが検討されていますし、B介護保険料を負担する年齢「40歳以上」を、引き下げることが審議されています。なお、40〜64歳の人たちの介護保険料が見直しで来年8月から段階的に引き上げることになっています。


 小手先の年金改悪を糾弾


 こうした社会保障制度改悪は、高齢者の暮らしを悪化させるだけではなく、子どもや孫に重くのしかかり、現役世代の暮らしを直撃しかねません。
 さらには、19年度には消費税率10%への引き上げも予定されています。そうなると、消費の冷え込みに連鎖し、地域経済や労働者の収入にも影響を及ぼすといった悪循環を引き起こしかねないのです。年金改悪を止めさせる以外にはありません。
 非正規労働者を増加させたことが、厚生年金・国民年金に加入できない労働者を生み出しています。これらを改革せず、小手先だけの改革を推進しようとしているところに問題があります。

 【メモ】 マクロ経済スライドは、04年に導入されたもので、受給額が増える際に増加額を約1%自動的に目減りさせる制度。現役男子の平均収入の59・3%となっていた標準的な年金を、23年には50・2%まで抑制させるとしてスタートした。

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