経団連は1月17日、17春闘の経営側の交渉指針にあたる「2017年版経営労働政策特別委員会報告」を発表した。17年の官製春闘は「働き方改革実現会議」に、16春闘の「官民対話」で外してきた労働(連合会長のみ1人)
を再び同席させた。「経労委特別報告」を7項目に区分けして批判する。
1.序文 榊原定征経団連会長談話をまとめている。
「企業収益の高水準から3年連続して大幅な年収ベースの賃金引き上げで所得を増加させた」と自賛する。しかし、「国民の将来不安は根強く、個人消費に力強さを欠いている」と嘆く。それは当然であり、経営側が主張する「大幅賃上げ」など一度もなく、社会保険負担増や増税で個人消費は伸びていない。それ対して「安定した政権基盤を利用して国民の痛みを伴う社会保障制度を見直せ」と悪政を煽る。
17春闘を賃上げよりも、職場の増員もしない「長時間労働の是正」や「若者、女性の活躍」に矛先を逸らし、賃金引き上げの本気度は見えない。賃金引き上げは「労働者の団結」で闘い取るしかない。
2.17春闘 昨年に引き続き、「労使関係良好(87・8%)の安定認識がある」と労使コミュニケーションの成果を並べ、「春闘は闘いではなく、経営のパートナーと協議する場」と規定。「労使関係は馴れ合いではなく、対立でもない良好な関係を築く場にしたい」と春闘を煙に巻く。
経営側の基本スタンスは「自社の支払い能力に基づいて決定する」を大原則に個別交渉個別回答の下、収益の拡大した企業は「年収ベースの賃金引き上げ」で経済の好循環を回すと言う。そうした中で、「賃金とは何か」に迫り、「企業が労働の対価として社員に支払うすべてのもの」と決めつけ、手当てや一時金など、どの部分を引き上げるか多様な選択肢があると勝手な理屈を付けてくる。私たちの春闘要求は、基本給と一時金の引上げで選択肢などはない。
資本はベースアップを総額人件費を膨らませる元凶と決めつける。定期昇給実施だけでは、新たに人件費の持ち出しを発生させない。「賃金とは何か」では、労働者の生活再生産費であることを自覚してアピールしないと経営側のレールに乗せられる。賃金制度の多様化を持ち出し、賃金決定の大原則は総額人件費を膨らませないと釘を刺す。加えて、「法定福利費」の高まりの影響から、序文で榊原会長が述べた「政権基盤を利用して社会保障制度を見直せ」と企業の持ち出しを削減するアピールをしている。 (宮川)
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