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2017.04.04
農業の破壊を許すな!
規制緩和で遺伝子組換えに道開く


                  
  品種改良、種子づくりを支えた種子法廃止法案が衆院農水委で可決

                    全国農業問題研究会河村 洋二

 地産地消に逆行

 コシヒカリよりも早く白い、早い、旨い=uハナエチゼン」(福井県)というお米は、15年もかけて品種改良され1993年に誕生した。今はやりの「夢ピリカ」( 北海道、2011年)も同じである。こうした時間のかかる品種改良、種子づくりを支えてきたのが「種子法」だ。
 種子法は「主要農作物(米、大麦、小麦、大豆)の生産と普及を促進するために」1952(昭和27)年制定された。そして都道府県が責任をもって実行管理(種子生産圃場や種子の品質管理など)してきたのである。それが都道府県農業試験場などである。地産地消が叫ばれ、地域限定の特色を持った品種が求められる中で、その必要性はますます高まっている。
 その種子法が廃止されようとしている。農水省が今国会に「種子法廃止法案」を提案したからである。理由は「良質かつ安い資材(種子)供給に都道府県中心のシステム(農業試験場など)が障害になって民間の参入や品種開発意欲が阻害されている。これでは外資との競争に勝てない」(筆者)というのである。
 
 企業の農業戦略に加担

 ちょっと待った。種子法廃止法案は規制改革会議が07年に主張した内容と同じではないか。あの時、農水省は「そのような事実はない」と反論した。今回の廃止法案も規制改革会議が昨年9月に提起したものである。ただその後、同会議で種子法の役割や廃止の理由が討論された様子はない。
 提起から半年、議論もなしに廃止とはあまりにも乱暴だ。民間の参入や種子開発意欲が、阻害されているというが具体的事実が全く報告されていない。
 そもそも農業の現場でタネが開発できないとか高いとか少ないとか農業試験場なんていらないといった声を聞いたことがない。民間が種子開発に乗り出せないのは、成果を上げるためにはあまりにも手間と金がかかり、費用対効果(利益)が合わないからである。どう考えて種子法廃止は拙速すぎる。
 我々には人手と費用のかかる事業から手を引くという目先の事しか考えない規制緩和(3ダケ主義=今だけ、金だけ、自分だけ)の極みとしか思えない。
 種子法廃止はモンサントなどの多国籍企業を喜ばせ、彼らの食料農業戦略を勇気づけるだけである。いや、むしろそのために準備しているのかもしれない。モンサントは、ラウンドアップ(農薬)耐性遺伝子組み換え作物(ラウンドアップが効かない遺伝子を組み入れた作物)や種子管理(1回しか発芽しないタネづくり)で世界の食料を支配する野望を持った多国籍企業である。
 1995年から10年間で世界の50の種子企業を買収し、遺伝子組み換え市場の90%を占めている。遺伝子組み換え作物の種類(表1)、作付面積は1億7030万haに達し、その70%がラウンドアップ耐性遺伝子組み換え作物である。種子関連事業売上は(表2)の通りで、今も拡大し続けている。

 食料安全保障が弱体化

 ラウンドアップ耐性イネの研究は進められており、遺伝子組み換え作物に対する食の安心、安全に対する国民の関心が後退すれば一気に上陸してくるだろう。
 種子法の廃止で地域限定の種子づくり、品種づくりに価値と関心を失った農山漁村にそれを押しとどめる力はないといわねばならない。
 種子を握られるということは食料を握られることであり、国民のいのちを握られるということである。種子法廃止は食料安全保障を危うくするものである。
 3月23日、種子法廃止法案が衆院農林水産委員会で可決された。しかし、衆院本会議、参院農林水産委員会、参院本会議と時間は十分ある。農業新聞で報道されるなど関係者、関係団体の危機感も強く高まっている。種子法廃止反対の声を上げ、世論をさらに盛り上げて、種子法廃止にストップをかけなけれねばならない。

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