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北朝鮮の人工衛星打ち上げと朝鮮情勢に関する見解
─朝鮮半島問題は平和的話し合いで創造せよ─
日米韓各国は朝鮮敵視の軍事行動と外交政策の転換をはかれ
北朝鮮は人工衛星打ち上げ留保の英断をのぞむ
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2009年3月17日
新社会党中央本部
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1、事態の推移について
➀ 2009年2月、北朝鮮は人工衛星「光明星2号」を「銀河2号」で打ち上げることを発表。後に(3月12日)4月4~8日に打ち上げると、国際海事機関に通報した。しかし、米国、韓国、日本などは北朝鮮の行為は国連安保理決議「1718」違反とし非難を強めている。
今回のロケットは「テポドン2号」と断定しており、浜田防衛相は3日の記者会見で、日本飛来時の対応については、「ロケットであっても制御を失って、わが国に落下する可能性があるとすれば、それに対処するのは当然だ」と表明した。
② そして現在、米国は、多様な迎撃態勢で応戦し撃ち落すとし、日本は自衛隊法での「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を適用し日本領内に落下の恐れがあれば迎撃をする態勢の検討に入っている。
③ これに対し、北朝鮮は「衛星を迎撃するならば米日韓に報復攻撃する」と警告し、朝鮮北部での航空機の飛行禁止、南北軍事通信の遮断などの対抗処置をするなど朝鮮半島情勢は極めて危険な状態になっている。
④ これと機を同じくして3月9日から20日まで、米韓合同軍事演習「キーリゾルブ」などが行なわれている。尚、これに先立ち3月2日に6年6カ月ぶりに「国連軍=米軍」と北朝鮮軍の将官級会談が開かれたが、進展が見られないまま9日から米韓軍事演習が開始された。
⑤北朝鮮は12日に国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)に通告と資料を提出した。これにより北朝鮮の人工衛星打上げは国際法上の手続きにより問題は除去された。しかし人工衛星打ち上げは、日本政府の反北朝鮮キャンペーンのもとではその非難のボルテージが高まるであろう。
⑥今回と1998年の「人工衛星打ち上げ」の最大の相違は、日本にミサイル防衛システム(MD)が配備されて初めて直面した事態ということである。これにより、より高度化に向けて戦争できる国へ自衛隊の再編が強まるであろう。また、2008年5月の宇宙基本法の制定により宇宙空間の軍事利用をもくろむ財界は、これを契機に軍事産業のより肥大化を図ろうとするであろう。
2、新社会党の態度
新社会党は現下の朝鮮半島の緊張状態を憂い、平和的な対話の道から事態を打開することを求める。
➀ 1950年に勃発した朝鮮戦争は、1953年7月27日に南北38度戦を境にして「休戦」状態で今日に至っている。南北間は今だ「戦争」状態なのであり、朝鮮半島は38度戦を境に「国連軍=米軍」と北朝鮮軍の対峙状態が続いており、この根本的な背景そのものが問われなければならない。
南北間はこれまで紆余曲折しながらも平和的解決に向かう条件を模索してきた。しかし、「9・11テロ」による米国の世界軍事戦略の転換により、北朝鮮が「悪の枢軸」「テロ国家」と指定され南北間の緊張を高めてきた。
同時に米国は、圧倒的な軍事力を背景に「単独行動主義」と「先制攻撃戦略」による恫喝と武力行使で世界を支配してきたのである。
他方で05年9月19日の6カ国協議により「全朝鮮半島の非核化を」が合意され、朝鮮半島は平和的発展のプロセスを辿るかのように見えたが、核の検証と放棄を巡って協議は難航している。
こうした歴史的経過を抜きにした北朝鮮の「ミサイル問題」の平和的解決の糸口は見出せないであろう。
② 米国ではオバマ大統領の登場によって核軍縮提案など外交戦略の変化の兆しがあるが、イスラエルを擁護したパレスチナへの対応に見られるような「二重基準」外交を変えようとしていない。
米国やイスラエル核を是とし、北朝鮮の核開発を非とし、自らが大量核兵器を保持しながら相手に核廃絶を求める態度に正義はない。全ての国の核は等しく廃絶すべきである。
③ そもそもインド、パキスタン、イスラエルなどの新たな核実験や核保有に対する効果的な対応をせず、北朝鮮のみに対する国連安保理決議1718の一方的な適用には公正さを欠いている。
また、国連の宇宙条約では特定国の宇宙の領有は認められないが、非侵略、平和的目的であれば探査、利用の自由を保障しており、どこの国も等しく宇宙空間の利用は認められている。
それにもかかわらず、米国や日本は北朝鮮の「人工衛星」でも「撃ち落とす」としている対応こそ問題がある。
しかし、いずれにしても双方とも「戦争の論理」から平和共存による外交的決着を期待する。
3、当面する朝鮮半島情勢を打開するためには次のように考える。
第1に、日米韓3国は「北朝鮮(国連加盟の独立国)の通信、資源探索衛星」をミサイルで迎撃するなどの表明を撤回すべきだ。
第2に、米韓両国の共同軍事演習は明らかな軍事的挑発と戦争再開を想定したものであり、これを即時中止し南北間の軍事緊張状態を解消すること。
第3に、北朝鮮の「人工衛星」打ち上げは当然の権利であるが、当面は打ち上げ留保の英断と同時に、平和利用目的であることを明らかにする更なる努力を望むものである。
第4に、日本政府は6カ国協議の合意事項を確実に履行し、北朝鮮敵視政策と「制裁」行為を中止し、日朝間にある諸課題について平和的話合いと信義を基礎とした日朝正常化に向けた対朝鮮政策に転換すべきである。
以上
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