1月6日に4度目の地下核実験を強行した朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)は、2月7日に地球観測衛星とする「光明星4号」を打ち上げた。日米韓をはじめ国際社会はこれを「長距離弾道ミサイル」の発射実験とし、朝鮮への「制裁」を一層強化しようとしている。日本政府はより強い制裁措置を表明し、衆参両院や地方議会で「非難決議」が採択されている。
1、新社会党は、以下の態度を表明する。
@アジア・太平洋戦争で唯一被爆した日本は、朝鮮を含め、いかなる国の核兵器製造や核実験にも反対する。2011年3月の東電福島原発の苛酷事故を踏まえ、脱原発の社会の構築に向かうべきである。さらに、米国の二重基準政策への追従や核の傘の依存を見直すべきである。日本は戦争政策でなく、憲法前文と9条の精神に立った平和外交に徹すべきである。
A私たちは、朝鮮を含め、いかなる国の核兵器の開発・貯蔵・実験を認めない。全ての国の核は等しく廃絶されるべきである。安全保障常任理事国5カ国とNPT未加盟の核保有国の全ての核兵器を廃絶すべきである。米国のイスラエルの核は是とし、自らが大量核兵器を保持しながら相手に核廃絶を求める態度に正義はない。
B当面は六者協議の再開、または米国と朝鮮の2カ国間の直接交渉を早急に再開すべきである。日本はそのための努力をすべきである。また、日本は拉致被害者問題の解決促進のためにも反朝鮮キャンペーンや過度の制裁行為へとエスカレートすることなく、2002年の日朝ピョンヤン宣言の合意の精神に沿った行動をとるべきである。
2、新社会党は事態を以下のように考える。
第一に、世界は核兵器を背景とした抑止論から脱却すべきである。かつての米ソ冷戦・東西ブロックの軍事的緊張は核兵器を背景とした抑止力により、力の均衡が保てるとしてきた。だが、冷戦構造が終焉し米国が唯一の軍事超大国となり、世界が一極構造となり力の均衡は失われた。
2009年4月、オバマ米大統領はチェコの首都プラハで次のような演説をした。「核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります。米国だけではこの活動で成功を収めることはできませんが、その先頭に立つことはできます。その活動を始めることはできます。従って本日、私は米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします」
全世界の人々がオバマのプラハ演説に感動し、その世界が来ることを願った。だが現実は遅々として進まず、米国はもとより世界は未だ「核抑止論」による核開発と保有の動きを止められないことが根本的な問題である。
96年9月に国連で採択された、あらゆる核実験、核爆発を禁じる包括的核実験禁止条約(CTBT)は米国をはじめ中国、エジプト、イラン、イスラエルは未批准、インド、パキスタン、朝鮮が未署名・未批准と発効要件が整わず、未発効である。この要因として「核抑止論」が大きく作用していることを指摘しなければならない。
第二に、核開発を巡る国連安全保障理事会や米国の二重基準政策の撤廃である。第二次世界大戦後、戦勝5カ国を軸に国連内に安全保障理事会が設けられた。ここに常任理事国5カ国(米・仏・英・露・中)の事実上の核の独占が始まった。これ以降、5カ国の意向に沿って世界の安全保障問題は推移してきた。1970年に核拡散防止条約(NPT)が発効し、5カ国以外の核の保有と取得が禁止された。だが、インド、パキスタン、イスラエルは5カ国の核の独占を認めずNPT条約に加盟していない。他方、加盟国の朝鮮は国際原子力機関(IAEA)が国家の主権を大きく毀損するような、過度の核査察を要求したことから、1993年3月にNPTから脱退を表明し、現在に至っている。このNPT未加盟の4カ国は事実上の核の保有国である。
米国がなすべきことは、オバマのプラハ演説を踏まえ、自らが核廃棄に向けた核軍縮の加速と安保理常任理事国4カ国への働きかけ、その上に立ってNPT未加盟4カ国の核の廃棄を求めることである。朝鮮だけに核放棄と査察の恫喝をかけ、他の3カ国を黙認するものであり、これでは解決にはならない。また米国の二重基準は、パレスチナへのイスラエルの先制攻撃、不法占拠に対する寛容な態度も露骨だ。ましてや小型戦術核兵器の開発など許容してはならない。
このように米国主導の二重基準の安全保障政策が国連をはじめ、世界でまかり通っている現実を根底から問わなければならない。朝鮮の核問題は「核の独占」と「包括的な核軍縮」という根本的な問題から論ずるべきである。
第三は、米国をはじめとした朝鮮敵視政策を転換すべきである。朝鮮半島は1953年7月27日に発効した「朝鮮戦争停戦協定」により未だ38度線を境に停戦状態にある。「国連軍=米軍」と朝鮮軍が60年以上、軍事的に対峙しているこの現実を直視しなければならない。米国は停戦協定を平和協定に転換する責任を持つ立場にありながら、これを怠り逆に停戦協定違反(平和協定締結不履行・外国軍隊の朝鮮半島からの撤退拒否)をし、毎年韓国との合同軍事演習を朝鮮の眼前で展開し、挑発的な行動をとっている。2015年2月から4月、韓国軍1万人、米軍5200人が参加した米韓合同軍事演習「キーリゾルフ」、韓国軍20万人、米軍7500人の「フオールイーグル」が実施された。いずれも先制攻撃と首都・平壌の占領を想定した大規模な演習である。そして今年の3月7日から4月30日まで、「最先端で史上最大規模」の合同軍事演習を予定している。かつて米国は、朝鮮に「ならず者国家」の烙印を押し、「核先制不使用宣言」を拒否(2010年3月)したことがあるとしても、朝鮮の核開発と核実験は、米国をはじめとする核5大国の「核抑止」論と同じ論理に立っていると言わざるを得ない。
米・韓・朝・中・露・日の「六者協議」は2008年12月の会議から中断している。この際、六カ国協議の再開や米国と朝鮮の直接対話など、米国が主導して話し合いの扉を開くべきである。朝鮮への「制裁」や「包囲」は、すればすれほど軍事的緊張を高め、不測の事態を招きかねない。朝鮮は核開発の一方で、休戦協定を平和協定に転換するよう長年にわたり米国に提案している。朝鮮半島の平和は、米韓の大規模軍事演習の中止、朝鮮敵視政策の転換、平和協定の締結努力、朝鮮半島の非核化に向けた包括的な話し合いのテーブルを持つことによって実現の緒につく。
第四に、日本は米国に従属することなく独自の外交を展開すべきである。むろんのこと戦争参加政策の促進に今回の事態を利用すべきでない。
日本は、朝鮮の核実験と「衛星」打ち上げに対し抗議と制裁を表明し、衆参両院で非難決議を採択した。だが、これまでと同じ対応の繰り返しでは「拉致問題」を含め、日朝間の不正常な事態は打開できないことは明らかだ。日本は、自ら進んで米国の核の傘に入りながら、朝鮮には核放棄を迫っている。また、昨年12月、核保有国でありNPT未加盟のインドと原子力協定に合意し、原発を輸出しようとしている。日本の外交基準は明らかな二重基準に立っており、二枚舌と言わざるをえない。
安倍政権は朝鮮問題を利用し、自らの戦争政策へと意図的に誘導している。朝鮮の人工衛星打ち上げそれ自体は「宇宙条約」による固有の権利であるが、安倍内閣・防衛省は「破壊処置命令」を発し、SM3やPAC3を緊急配備し、全国民に映像を通して臨戦態勢を見せつけた。また、全国自治体を結ぶ緊急情報システム「エムネット」による情報提供し、緊張状態を演出した。マスコミもこれに同調し、あたかもミサイルが日本全土に飛来すると誤解するような異常な状態がつくられた。安倍政権は、朝鮮の核実験を利用して戦争参加法の定着を図り、「緊急事態条項」新設に連動する改憲キャンペーンをやめるべきである。
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