海上自衛隊イージス艦「あたご」の漁船との衝突事故について

2008年2月21日
新社会党中央本部

 2月19日午前4時過ぎ、千葉県野島崎沖40キロの海上で、海上自衛隊イージス艦「あたご」が、マグロはえなわ漁船「清徳丸」と衝突事故を起こした。漁船は沈没し乗員親子2名は行方不明となり、その捜索は難航している。

 この衝突事故の原因は現場状況や航路および船首の傷跡から、イージス艦「あたご」が「清徳丸」の真横に船首から衝突したもようである。その原因は次第に明らかになろう。
 自衛隊は事実を隠蔽することなく海上保安庁に全面協力の上、事故の真相と原因の究明をすることが求めるとともに、漁船の2名の乗組員の捜索に全力を挙げることを強く要望するものである。

 また、この事件の責任をとり防衛大臣の辞任を要求するものでもある。
 
 今回の事件を単なる海難事故で済ますことはできない。先の在日沖縄米軍兵士による少女暴行事件や続発する米兵の事件、事故、今回のイージス艦「あたご」の衝突事故を通じて日本政府の基本的政治姿勢が国民の立場にたってはいないことが露呈した。

 第一に、事故が発生してからの対応の遅れである。何はともあれ人命救助に全力を挙げる初動態勢、防衛省内部の情報伝達が遅延し、防衛大臣に伝達されたのは90分後であり、彼らのいう「危機管理態勢」とは国民を守るものでないことは明らかである。いわんや「有事即応」態勢など「机上」の話である。

 第二に、改めて「軍は民を守らない」という軍隊の本質が明らかになったことである。そもそも、漁船や商船が頻繁に行き交う航路でも軍艦の「出入港」は軍事秘密とされている。ましてや東京湾周囲では特に慎重に航行しなければならないのは当然である。1988年7月に起きた潜水艦「なだしお」の遊漁船追突事件による30名の犠牲者を出した経験も生かされていない。またこうした事故を教訓化させ、東京湾をはじめ民間航路が錯綜する海域での軍艦艇の航路規制をするなどの施策もとられていない。

 今回でも自衛艦が漁船に衝突した時も直ちに救助活動をする体制をとらなかった。在沖縄米軍の少女暴行事件でも「日米地位協定」が米国の日本への「思いやり」によって運用されている。福田首相のコメントは米軍や自衛隊の事件、事故続発による岩国への米空母艦載機の移転、沖縄名護市への普天間基地の移設問題への影響や自衛隊への批判をどう回避するかにあり、口先だけの「人命優先」に過ぎない。

 第三に、事故を起こした海上自衛隊イージス艦「あたご」をはじめとした、自衛隊の装備と予算が日本の「防衛」上必要であるのかということである。イージス艦を日本は5隻所有し1隻も建造中である。その運用は事実上日米共同作戦行動と一体にされている。現に2002年12月にはイージス艦「こんごう」がインド洋に派遣され日米軍事共同作戦を展開するなど米軍の補完行動をした。専守防衛とは名ばかりの集団的自衛権の行使に踏み込んでもいる。またこうした高度、高額の装備はまさに防衛に名を借りた政官業の軍事利権を生み出すものであり、到底認めることはできないものである。

 第四に、こうした、事件、事故を通じて日本の安全保障問題と外交政策を改めて問い直さなければならない。米軍再編に沿った自衛隊の活動と予算の内実、「テロ特措法」から自衛隊の海外派兵を恒常化する一般法案の画策などを見れば、米国と政官軍事産業の利益を守るための「防衛政策」に過ぎない。日本は仮想的国をつくることでなく、憲法を基本にした真の平和外交をすること、自衛隊の巨額の軍事予算をなくせば、日本の平和と国民の生活と福祉の向上に資することができる。改めて安保条約を廃棄し、日本から米駐留軍を撤去させること。自衛隊は解体し、その殺人用の装備と部隊を人名救助の装備と部隊に変え、日本や世界の大規模災害に即応できる高度な「災害救助隊」再編することが求められている。