水俣病特措法成立に抗議する


2009年7月8日
新社会党中央本部


 水俣病未認定患者に対する「水俣病被害者を救済する特別措置法案」が、7月3日の衆議院に続いて本日7月8日参議院でも、自民・公明・民主などの賛成、共産・社民などの反対で可決成立した。新社会党は、怒りをもって抗議をする。



1.この法案は、1995年12月のいわゆる「政治解決」に続く二回目の国家権力による水俣病切り捨て策である。前回は、国、熊本県の責任を明確にせず、水俣病患者であるかどうかも明確にしないまま、一人当たり260万円の一時金で裁判を取り下げさせ、「最終解決」とされた。

 しかし、その後2004年10月15日、唯一裁判を継続していた水俣病関西訴訟が、最高裁判所判決で国、熊本県の責任を認めさせ、水俣病であることの認定基準についても、水俣湾周辺で汚染された魚介類の多食と、舌先の二点識別、指先の二点識別に異常、口周辺の感覚障害などあれば水俣病と認定すると幅を広げさせた。
 
 それでも国、熊本県とも認定基準の見直しをすることなく今日に至っていた。


2.最高裁判所の判決以降、熊本、鹿児島両県の住民が新たに水俣病の申請に立ち上がった。水俣病申請をすると、魚が売れなくなる、親類や周辺の人たちから嫌われる、恥ずかしい、東京、大阪などに出ている子ども達の結婚、就職に支障が出る、などの不安のために黙っていた不知火海沿岸の住民が、そのような症状は自分にもあると手を上げたのである。

 認定申請の方法すら分からない人たちが多く、患者さんの掘り起こし活動も自分たちの努力で始まった。こうした申請者が現在約3万人となっている。


3.自民、公明によるプロジェクトチームが、2006年に動き出し翌年10月に、一時金150万円、療養手当月1万円を提示したがチッソは拒否をした。

 そこで、2009年になって、水俣病被害者であることを明確にしたものの、チッソ分社化を認める、公害健康被害補償法の地域指定を終了する (3年をめどに対象者を確定し、以降は申請を受けない)という案をまとめた。

 つまり、補償会社としてのチッソと事業継続の会社を切り離して別会社とする、別会社の株式を売却して得た金を患者さんへの一時金、及び熊本県への債権返済に当てるというもので、患者さんへの支払いが終わったらチッソは解散するという内容である。

 チッソは受け入れを表明したが、水俣病としてこれまで認定された方をはじめ、裁判を闘っている患者さんたちは反対した。原因企業であるチッソが消滅すれば、今後の補償をどうするのか、新たに申請しても相手はいないではないか、という不安があるのである。


4.民主党は、当初チッソ分社化と公健法終了反対を主張していたが、公健法終了は取り下げさせても、チッソ分社化を認め、補償を求める相手の消滅の道を開いたのである。これから大勢の認定申請が想定される今、水俣病の幕引きに繋がる法案といわざるを得ない。

 現地に足を運び患者、被害者の声を聞くことなく、水俣病被害者が切り捨てられたのである。当事者を無視したこの決定は、水俣病の歴史に汚点として残る。被害者は生涯苦しみを背負い続け、身体的な苦しみの上に見捨てられていく精神的なつらさが追い打ちをかけるのである。


5.新社会党は、真の水俣病解決は、まず、不知火海沿岸住民の健康調査を、費用、年月はかかろうとも実施すべきと考える。次に、認定基準を最高裁判決に基づいて幅広いものとすること。チッソの分社化を認めず、存続させて水俣病患者が生きている限り補償をさせること、国と熊本県も最後まで責任を果たすべきと考える。

 そのために患者の皆さんとともに闘い続ける