1、安倍内閣は新たな「防衛装備移転三原則」を条件付きで4月1日に閣議決定した。その条件とは(1)国連安保理決議の違反国や紛争当事国には輸出しない(2)平和貢献・国際協力の積極推進や日本の安全保障に資する場合に限定し輸出を認め、透明性を確保しつつ厳格審査(3)目的外使用および第三国輸出について適正管理が確保される場合に限定、大要以上の三点で構成されている。この新たな3原則の運用、案件の判断は昨年に新設された「国家安全保障会議」(日本版NSC)で決定し、年次報告書をもって事後報告としている。
2、日本はこれまで「武器輸出3原則」により武器の輸出に一定の歯止めをかけてきた。しかし1983年に中曽根内閣が米国の要請に応え、ハイテク兵器の部品輸出の是認で例外を設け、2004年には小泉内閣がミサイル防衛の共同開発を例外として認めた。ダメ押しが、2011年12月の民主党野田政権の官房長談話として閣議決定した、武器輸出の運用緩和・武器の共同開発を容認した。それ以降、宇宙の軍事利用を前提とした「宇宙航空研究開発機構法」の改正をはじめ、最新鋭戦闘機F35の共同開発、12月の南スーダンでの韓国軍への弾薬1万発の供与など、様々な例外を重ねて事実上「武器輸出3原則」を骨抜きにしてきた。また、ODAによる巡視船の供与なども事実上の武器輸出であり、こうした既成事実を重ねてきた。これらを踏み台として、今回の「防衛装備移転三原則」の決定は、事実上の武器輸出解禁策である。この閣議決定により日本の武器輸出の規模は拡大する。しかし、その武器輸出の内実は年次報告書で全て公表するとしているが、秘密保護法により、その実態が隠ぺいされる可能性は大きい。
3、この新たな原則は、これまでの3原則にある「国際紛争の助長を回避」という条項を敢えて取り払っている。また、「武器の移転は限定」し「目的外使用や第三国移転に適正管理の確保」を「厳格な審査」で行うとするが、安倍首相をトップとする国家安全保障会議での恣意的な運用も可能だ。また「積極的国際平和主義」とは、実は米国の物差しによる国際秩序維持活動を前提とするものである。米国が一方的に擁護するイスラエルのパレスチナ人民への攻撃に日本製武器が使用される可能性もある。また、この決定は日本を武器の輸出商人として自立できる経済基盤を確立するために、財界の意を受けたものでもある。防衛産業業界から長年に亘り武器輸出解禁の要望がある。安倍政権の国家安全保障戦略では「国際競争力の強化を含めた我が国の防衛生産・技術基盤を維持・強化していく。」としそれに応え、軍需産業の育成・強化に踏み込んだものである。これらを覆うレトリックは「グローバル化」と「積極的平和主義・国際協調」である。
これでアジア諸国は安倍政権の「歴史認識」「日の丸・君が代・靖国」「集団的自衛権」と重なり、日本へのより一層の警戒感を醸成することになる。
4、これまでの武器輸出3原則から、新たな「防衛装備移転三原則」の決定は、憲法9条を真っ向から否定するもので、「集団的自衛権行使」の容認と相まって、日本が平和国家から「戦争ができる国」への新たな一歩を踏み出した国の形を変える重大な政治転換であり認めることはできない。「格差と貧困、戦争への道」を許さないために、新社会党はより一層奮闘する。
以上
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