集団的自衛権の行使へ憲法解釈の変更は許されない

2014年5月16日
新社会党中央執行委員会


 

1、安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤に関する懇談会(安
保法制懇)」は5月15 日に憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認す
るよう提言する報告書を提出した。
報告を受けた安倍首相は同日記者会見し、報告書を踏まえた「基本的方向性」
を発表した。安倍首相はこれを土台に翌週から与党協議を開始し、解釈改憲、
集団的自衛権行使容認の閣議決定に突き進むことを宣言した。これはまさに先
のアジア太平洋戦争の反省に立ち、戦後培ってきた平和国家を否定し「戦争が
できる国」へ日本を改造、九条を真っ向から否定する事実上のクーデターであ
り、断じて認めることはできない。


2、安倍首相は記者会見で「国民の命を守る」と拳を振り上げて再三言明し、
まるで戦争前夜のごとき演出に興じた。国民の情緒に訴え、仮説を2例あげ
「子や孫」の命を守る責任が政府にあることをヒットラー張りに力説した。
安倍首相は、憲法前文と九条の精神は否定すべきものであり、平和は威嚇と
武力で実現できるという幻想に支配されている。
こうした安倍首相の情緒的演説と舞台は着々と準備されてきた。第一次安倍
政権では第二の憲法とされる「教育基本法」を改悪、改憲手続きを定める「国
民投票法」の強行制定。第二次安倍政権は2013 年11 月には「国家安全保障会
議設置法」、12 月には「特定秘密保護法」の制定強行と矢継ぎ早に悪法を制定
した。その後、「国家安全保障戦略」、「新防衛大綱」、「中期防衛力整備計画」を閣議決定してきた。加えて4 月には「武器輸出三原則」の撤廃と解禁を閣議決定。さらに、「共謀罪」をはじめ各種の治安立法の制定を狙うなど、「戦争ができる国」への道を掃き清める策を準備している。
安倍首相は「国家安全保障会議」と「閣議決定」という独裁的に国の命運を
決める「打ち出の小槌」を手に入れたかのようである。立法府はますます軽視
され、違憲立法が乱発される様相を呈している。


3、安倍首相は「戦後レジ―ムからの脱却」と称し、日本の戦争責任とその歴
史的定見の見直しを進めてきた。米国すら「失望」と表明した靖国神社参拝、
日本の戦争責任を表明した「村山談話」の再検討を口にするなど、アジア諸
国の警戒感と無用な対立を醸成させてきた。こうして「外敵」を自らつくり
出し、「領土・領海」や「国益」の防衛を煽ってきた。また安倍政権を後押し
する“お友達人事”でつくられた「安保法制懇」の答申は何ら法的権限もな
いにもかかわらず、あたかも「識者」の提言のごとく扱った。


4、安倍首相の暴走は同時に多くの矛盾を深め、賃上げと雇用創出というアベ
ノミクスの幻想は綻びはじめている。大手輸出大企業はリーマンショック前
の最高益の水準に回復しつつある。さらに企業優遇の法人税の20%台への減
税となれば一部の富裕化がますます加速する。他方、労働者、勤労国民の生
活は一向に改善されないどころか、困窮の度は深まっている。消費税の8%
への増税はボディブローのように家計を圧迫する。介護、年金、医療関係の
社会保障関係費は削減、給付条件の厳格化、行政サービスのさらなる悪化と
なりはじめている。また労働関係法の更なる改悪が画策され、さらに多くの
不安定雇用労働者を生み出そうとしている。また、福島原発事故被害者を棄
民化し、原発輸出と再稼働に突進するなど、諸矛盾は激化している。


5、解釈改憲で集団的自衛権を行使する寸前の日本の現実は、いわゆる「護憲
勢力」の真価を根本的に問いかけている。今や、国会では改憲勢力は圧倒的
多数であるが、世論は改憲反対が賛成を上回っている。こうした国会と世論
のねじれ現象は小選挙区制度を導入して以来のものであり、この選挙制度の
根本的な転換が求められる。同時にその選挙制度下で護憲政党が選択肢に入
りうる努力の決定的不足が今日の事態の一つの要因と言わざるをえない。新
社会党はこの間、国政選挙で護憲政党が選択肢に入るべく共同選挙を提案し
続け闘ってきた。しかし、その実現に至っておらず、2016 年の国政選挙まで
この状態が続く。次の国政選挙を待つほど余裕はない。新社会党はその非力
を痛切に反省するとともに、ここに改めて安倍政権を打倒するため改憲阻止
の共同闘争とその力を背景とした共同選挙を呼びかける。


6、私たちと危機感と決意を同じくする動きが始まっている。「特定秘密保護法」反対運動にみられる広範な民主勢力の連帯、脱原発運動に集う新たなエネルギーは健在である。そして現下の解釈改憲・集団的自衛権行使容認に反対す
る新たな運動体づくりがはじめられている。「戦争させない1000 人委員会」
が学者・文化人などの呼びかけで、全国に燎原の火のように広がりつつある。
これに市民をはじめ組織された労働者も呼応し結集をはじめた。新社会党は
こうした動きに全面的に連帯し、安倍改憲内閣打倒に向け奮闘する決意を改
めて表明する。

   以上