米国は対話を、朝鮮は核凍結を


2017年3月13日
新社会党中央執行委員会


 

 3月6日早朝、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は、米韓合同軍事演習に対抗するかのように、日本の排他的経済水域に向けて4発のミサイルを発射した。このミサイルは在日米軍基地を標的としたものであるが、仮に第二次朝鮮戦争が起これば日本は確実に最悪の被害から免れない。中国の王毅外相は3月8日に米朝間を正面衝突寸前の2本の列車に例え、「赤信号をともして、同時にブレーキをかけることが急務だ」と述べ、関係国に自制を強く求めた。だが、日本政府は「脅威が新たな段階」とし、朝鮮非難と更なる制裁強化を表明、同時に米国との戦争同盟強化の道を突き進もうとしている。これまで日本政府は朝鮮に対し、数々の「制裁」を課してきたが、一向に効果はなく、逆に大陸間弾道弾を開発するまでに至った。これまでの対朝鮮政策の延長では、朝鮮の核開発やミサイル試射を止めることは不可能だ。自民党内では敵基地先制攻撃論が公然化し、これまでの制裁と圧力に加えて軍事力を選択肢にいれようとしている。
 おりしも米国トランプ大統領は米軍事力を10%・6兆円を増額、同盟国の軍事費の負担増額を2%に求めており、安倍首相はこれに呼応し、これまでの防衛費対GNP比1%枠を取り払うことを表明した。現に今年度防衛費は1%を超え、最新鋭の米国の兵器を大量に購入する予算となった。また、国際貢献の名による南スーダンへの自衛隊派遣で、武器使用緩和、「駆付け警護」と宿営地共同防衛の新たな任務の実績をつくり、今後は同様の新任務での海外派遣を可能とした。
 軍事的緊張関係の高まりはアジア各地域で起きている。特に米韓と中国、米韓と朝鮮だ。米国と韓国は昨年7月、米最新鋭ミサイル防衛システム「THAAD」の韓国配備を決定した。この配備の目的を米韓両国は対朝鮮とするものの、中国は自国や周辺地域の安全保障と戦略バランスを崩すとし、猛烈に反対している。ロシアも「一定の処置を取らざるを得ない」とし、配備に反対している。韓国のミサイル配備は南東部のロッテ所有の星州ゴルフ場に配備する計画としたが、中国は一貫して反対を表明し、数々の対抗処置を打ち出している。
 他方,米韓は朝鮮への政治的、軍事的緊張を高めている。金正男事件による対朝鮮非難が高まる中、トランプ大統領は「先制攻撃」をも排除しない姿勢を見せた。3月からは大規模な米韓合同軍事演習が行われ、米韓両国で31万人以上を動員し開始した。この演習は平壌や指導部の殲滅など、あらゆることが想定されたものである。これに対する反応が3月6日の4発のミサイル発射であり、米韓合同軍事演習をけん制した。まさに一触即発の軍事衝突が起きる可能性を内包している。
 ヨーロッパも不安定化している。ロシアと国境を接するNATO(28か国加盟の北大西洋条約機構)加盟のバルト3国とポーランドは軍備を増強し、昨年6月には米国をはじめ24カ国、3万人を超す史上最大の軍事演習を行い、加えて「THAAD」の配備も検討されており、これに対しロシアも軍事的対抗処置を講じるという。
 今や世界は新たな軍拡競争に突入している。いつ一触即発の事態が起き、それがエスカレートするか誰にも否定できない。世界的規模の新たな軍拡を止めなければならない。その仲裁役は国連であるが、必ずしもその機能は十分ではない。この軍拡競争を抑制し、軍事的緊張を和らげることができるのは平和憲法をもつ日本である。アジア太平洋戦争から70年間、憲法前文と9条を持ち、他国に一切の武力行使もせず今日まで来た日本には、まだ世界の希望が注がれている。今こそ世界平和のために日本の役割は大きい。
 だが、そのためには日本が外交及び安全保障政策の大転換の決断が必要だ。まず、南スーダンから自衛隊の撤退を5月末ではなく即時とし、情報の公開と安全保障関連法を廃止する。そして世界のどこの国とも等しく互恵・平等の外交に徹すべきだ。これまでの二重基準の外交政策の放棄、国連常任理事国の核も他の国の核も一切認めないこと。国連での決議も不偏不党に対応することである。
 目の前にある朝鮮問題では、未だ米国と韓国が38度線を挟み朝鮮と対峙する停戦状態を早急に打開し、戦争の危機回避のためにも、米国は米韓合同軍事演習を中止し、朝鮮との対話の窓口を開くこと、朝鮮は核・ミサイル開発を凍結することだ。これを促すため、日本が仲介の労をとることこそ「積極的平和主義」である。また、中国との緊張関係をつくり出している「尖閣」問題は、1972年9月、1978年8月の尖閣問題の棚上げ合意に戻し、経済開発など両国の益になる交渉を開始すべきである。
 世界の民衆は飢餓と戦争がない世界を求めている。今こそ日本が平和憲法と国際的信頼を基礎に、日本から世界平和の礎を築こう。核による威嚇や武力行使では平和は創れない。まだ遅くはない、道は戻れるのだ。               

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