共謀罪法案強行採決と立法府を無視した安倍政権を糾弾する


2017年6月18日
新社会党中央執行委員会


 

1、6月15日早朝、自民・公明の安倍与党と維新の会は、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)を強行採決した。新社会党はこの共謀罪法案の強行採決を怒りを込めて糾弾する。
2、安倍内閣が提出した今回の共謀罪法案は、明らかに「戦争への道」を掃き清める悪法であり、憲法と相いれない民主主義を真っ向から否定する法律である。それゆえに共謀罪法案は過去三度提案され、いずれも否決・廃案になった代物だが、安倍内閣は強行採決をした。
3、共謀罪法案の強行採決とこれに伴う安倍内閣と自公与党と維新の会の暴挙は歴史と憲政を真っ向から否定する犯罪的行為である。



 第一に、憲法の理念と基本的人権を否定する行為である。共謀罪法案は「内心の自由」を明らかに侵すものだ。犯罪の合意(黙示を含む)があった瞬間に共謀罪が成立するというのだが、「合意」の意思や考えは気持ちの延長線上にあり、客観的には誰にも見えないものだから、内心を取り締まることになる。同時に国民の自由な言論や報道が委縮する効果をもたらすのである。官憲が内心に踏み込んで処罰し、人権を著しく侵害した治安維持法の復活との懸念は、審議を通じて解消されていない。
 第二に、現行の「罪刑法定主義」を根本から揺るがすことになる。日本の刑事法の原則は、犯罪の具体的な行動を伴う既遂や未遂を処罰する。
 だが、実行されてもいない犯罪を「処罰」するとなると市民の「心の中」に踏み込んだ捜査は避けられない。何が犯罪なのか明確でない中、判断するのは警察であり、権力の恣意的捜査が可能ともなる。犯罪が実際に起こっていない段階でも2人以上で「計画」し、そのうちの一人が「実行準備行為」をしたと捜査機関がみなせば、全員処罰できるのだ。しかも密告すれば自分の罪が軽くなる司法取引や、摘発するための広範囲な盗聴も必要になる。
 第三に、共謀罪法案は疑問と問題点を残したままの欠陥法だ。277の犯罪に網をかける根拠は何ら解明されていない。犯罪実行前段を処罰する予備罪などは、すでに一部の重罪に限って設けている。陰謀罪8罪、共謀罪13罪、予備罪37罪、準備罪8罪、すでにこれだけ認められており、組織犯罪について広範な処罰が可能なのだ。にもかかわらず「2020年オリンピック・パラリンピックのためのテロの未然防止」との理由による277の犯罪は全くなじまないし、「一般人は対象にならない」との説明も歯止めがなく破綻した。また、安倍内閣が言う「国際組織犯罪防止条約の締結」は国際犯罪組織の資金ルートや洗浄などの対処を指し、277の犯罪を対象とした共謀罪とは全く無関係だ。
 第四に、共謀罪法案の国会審議に現れた安倍内閣と政権与党の振る舞いは、立法府の軽視、議会制民主主義を否定する行為だ。自民、公明両党は衆議院での強行採決に加え、6月15日早朝に共謀罪法案を参院法務委員会での審議途中のまま、「中間報告」と称して本会議での採決を強行し同法案を成立させた。これを恥じない内閣と自公与党は、明らかに立法府を形骸化させる、独裁的政治手法だ。



 このように安倍内閣と自公与党と維新の会の強引で議会制民主主義を否定する暴挙は、彼らの焦りでもある。この法案が欠陥法であることが日毎に明らかになり、国民の中に不安と懸念の声が大きく膨らんできたからだ。また、安倍政権の最大の危機である「森友・加計学園」問題での批判から逃げ切るため一日も、早く幕を引き、沈静化をはかることにあった。
 現に安倍内閣の支持率は急落し、不支持率が上昇している。6月の国会会期末前後の時期に行われた世論調査では、安倍内閣の支持率が軒並み下落。朝日新聞は41%(5月比6ポイント減)、毎日新聞は36%(5月比10ポイント減)だ。安倍内閣の意を呈する読売新聞ですら支持率49%(5月比12ポイント減)となり不支持率は41%(5月比28ポイント増)だ。
 安倍内閣は明らかに追い詰められている。想定される総選挙、参議院選挙では「野党と市民の共闘」をより大きくし、安倍与党の議席を大幅に減らそう。そして、安倍内閣の退陣とともに、共謀罪法はもとより、秘密保護法、戦争法制、この3法の廃止に向けた闘いを強めよう。         

              

 以上