記録的豪雨、強風による台風19号の甚大な被害が全国各地に広がっています。災害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。お亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表します。
東日本に大規模な洪水や土砂災害を引き起こした台風19号は、80人以上の死者、行方不明者を出し、依然9万5千か所以上で断水、4000人以上(共同集計10.19)が避難を続けていると言われます。
被災現地では台風19号に続き、19日に、そして、先週末にかけて大雨があり、大きな被害を受けています。復旧作業の疲労とともに、二次災害・三次災害の恐怖とたたかいながら、不安におびえる日々を過ごしていることと思います。
東日本を覆い尽くす広い範囲に被害をもたらした台風19号の上陸から1週間以上がたち、台風被害の状況が刻々と明らかになり被災者支援の活動も広がっています。
私たちは、あらためて政府や各自治体に救命や救援、安全確保、そして復旧作業に全力を期すことを強く要請するとともに、今回の大規模災害で問われている課題―予防・避難・救援・復旧―について点検し、政治に求められることは何か、皆さんとともに考えたいと思います。
1.第一の課題は洪水対応での留意点です。
「ハザードマップ」は、国土地理院が航空写真などをもとに作った推定浸水区域ですが、事前に示されたハザードマップと実際に堤防が決壊したりした地点は重なり合っています。被害は「想定内」だったということです。しかし、それにもかかわらず避難所や災害対応拠点の庁舎が浸水想定区域に含まれている自治体もあり、東京などでも住民が入りきれない避難所も見られハザードマップが生かされてこなかったことがわかりました。そもそも被害が想定されるなら事前に対処すべきことは政府の責任です。もちろん財政的制約を頭から否定するつもりはありませんが、認識が不十分であったことは事実です。
2.「認識が不十分」との指摘はこれだけではありません。厚労省(18年9月)調査によれば全国の主要な浄水場の22%にあたる758か所が浸水想定区域にあり、そのうち76%の578か所は入口の嵩上げや防水扉の設置などの対策がされていませんでした。土砂災害計画区域の542か所のうち496か所が未対策だと指摘されています。
3.今回の豪雨で水位が限界に達し、洪水リスクの高い緊急放流を余儀なくされたダムは6か所でした。昨年の西日本豪雨を踏まえて「事前放流」が西日本を中心に取組みが始まっていますが、今回の6ダムでは事前放流を実施できる体制を整えていませんでした。
事前放流は、昨年の豪雨で愛媛県のダムが緊急放流した後、下流氾濫で犠牲者を出した教訓からの対策です。豪雨が予想される時、事前に下流の自治体や農業団体の「利水管理者」の了解を得なければならないため、ルールを定めるものです。しかし、今回の6か所はいずれも実施要領を定めていませんでした。
その結果、神奈川県相模原市の城山ダムの緊急放流開始が二転三転し、通報が避難指示や勧告に割れるなど混乱をしました。今回は、大事故にいたらないで済みましたが、国交省の「有識者検討会」が「直ちに対応すべきこと」としていた昨年の教訓を未だ実行していないことは重要な問題です。
4.今回の「災害ごみ」は昨年の西日本豪雨の約190万トンを上回り数百万トン発生すると予測されています。各自治体ではハザードマップを作り避難所等の指定はありましたが、水害廃棄物処理のための「ごみ仮置き場」などは視野の外でした。多摩川沿いで浸水被害が発生した東京都大田区でも災害廃棄物計画から抜け落ちていて肝心の分別の初動体制が取れなかったとの指摘があります。結果、災害ゴミが路上脇や住宅街に積み上がったままになっています。
今回、水害としては異例の規模で処理完了まで2年以上かかる見込みです。災害廃棄物処理は自治体をまたがる広域処理が解消のカギになりますが、それを担うべき各自治体での廃棄物事業執行に直接携わる職員は、一部の自治体を除いてほとんどいないのが現在の廃棄物行政の実態です。自明のことですが経験の蓄積や基礎資料がない自治体が、他の自治体から救援にかけつけた支援職員を指揮・運用することなどできません。請け負っている民間業者は「契約」での受託関係であり、緊急時は対応できないことがこれまでの教訓であったはずです。
5. 今回の台風で亡くなられた方の7割が60歳以上であることが判明しています。政府は「いのちを守る行動」を呼びかけました。首都圏では多くの避難所が指定されました。しかし、東京都台東区の避難所では区民であることの証明を求められ「ホームレス」は排除されたと報道がありました。非難の声が殺到し、台東区長は撤回とお詫びを表明しました。では、障がい者の人たちは、在日外国人の人たちには「避難の徹底と受入体制」はどうだったのでしょうか。日常、自治体の公共施設利用に、「市民・区民」と限定しているところもあり、結果在日外国人が施設利用できないということも聞きます。皆さんの自治体はどうなっているでしょう。誰でも避難できる「避難所」になっていたでしょうか。
6.台風で被災し、災害救助法の適用が決まった自治体数は13都県・300市町村を超え、東日本大震災の8都県・237市町村や昨年の西日本豪雨の11府県・110市町村を超え広範囲にまたがります。これまで指摘したように、予防・避難・救援・復旧は自治体職員が中軸となり担わなければなりません。しかし、その自治体職員の4割は「臨時非常勤労働者」です。仕事量の増大を臨時非常勤労働者で穴埋めし、自治体が非常時にも、日常的にも果たすべき役割を担うことができなくなっています。自治体公務員が住民と行政の欠陥の狭間の中で精神的・肉体的に追い詰められている実態も顕在化しています。災害対策の中心は、自治体職員の増員にあることは今回の重要な教訓です。
新社会党は、自治体行政サービスを自治体住民の手に取り戻すことが大規模災害で問われている課題―予防・避難・救援・復旧―の要諦であると考えています。大型台風や大地震もいつ、どこで起きるか分かりません。すべての自治体が、わがこととして準備を整えておくべきです。まだまだ検証されなければならない課題はあると思いますので、自分たちの自治体が今回どうであったのか検証し、防災対策に生かされなければなりません。
7.最後に、政治に求められているのは「気候変動」への対策・対応です。
地球温暖化やそれに伴う水蒸気量の増加等の世界的な規模の変動が寄与しているとの見解は世界の専門家の知見です。2015年に合意されたパリ協定にそって今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにすることが確認されています。そのための日本のロードマップが早急に求められ、具体的に実行すべきです。
しかし、一方この温暖化を利用し、また来た道を戻ろうとする温室ガスを排出しない電力として「原発活用論」が執拗にあります。しかし、今回の台風により、放射性物質を含む「フレコンバック」が流出しました。福島県田村市(17日)では、19袋中、10袋が空の状態で見つかったことが分かり、すでに放射性廃棄物が流出してしまっています。政府、自治体とも異常数値は出でいないとしていますがどうでしょうか。流出があった仮置き場は、2667袋が保管されていたそうですが、福島県内には数限りないほどフレコンバックが山積みされています。放射性廃棄物処理も廃炉作業も目途が立たない状況であることは周知のとおりです。福井県の高浜原発立地に関わる関西電力の「金品授与事件」の解明も終わっていません。東電の福島原発の事故責任も救済も終わっていません。「原発は人類と共存できない」とは科学的知見だけではなく、倫理的にも共存できないのです。
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