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 新社会党
2011年6月7日

  G8 原発政策を推進  菅首相も協調
     仏米ロ日が主導  主役は原発産業


 フランスのドービルで5月26〜27日に開かれた主要国首脳会議(G8)の主要議題は原発とアラブ民主化の二つ。日本の「フクシマ」が不名誉の注目を浴びた。

 脱原発のドイツとイタリアを除き、米英仏ロ加日の6カ国は推進・維持の立場を堅持、「宣言」は「さまざまなアプローチをとりうる」として原発政策の推進を前提に「最高水準の安全性の推進」をうたった。



 日本が異例の主役―福島第一原発の事故で世界を不安に陥れた日本。菅首相は、加害国として5項目の原子力安全策を提案した。「フクシマ」を脱原発につなげないための演出である。

 これを議長国仏のサルコジ大統領が補佐し、G8は1953年以来の「原子力の平和利用」路線を踏襲した。

 フクシマが収束の確かな見通しが立たないなか、菅首相は脱原発と推進派に揺れる国内世論を見ながら、浜岡原発の期限付き停止と10年版「エネルギー基本計画」の見直し、自然エネルギー比率を2030年までに20%とする目標に軌道修正。G8では期限を10年前倒し、太陽光パネル1000万戸設置計画を公約した。場当たり的、綱渡りの印象が否めない。

 もう一人の主役サルコジ大統領は、「原発は価格ではなく安全性が何より優先されるべき」と述べた。仏は原発58基を抱え、原子力が全発電量の75%を占める原発大国。サルコジ発言の真意は、原発ビジネスに勝ち抜くという強い意思表示だ。

 アラブ首長国連邦での原発商戦でアレバ社製の新型加圧型原子炉(EPR)がより安価な韓国製に敗れた腹いせから、仏は安全性の国際基準を高めて価格競争に勝つ戦略を「宣言」に込めた。

 テロにも耐えられるとの触れ込みのアレバ社製原発。6月1日に始まったEU域内143基の安全性テストにもテロ条項が加えられた。また、「宣言」の原子力の安全性に関する指針にいう「外的な事象」にもテロが読み込まれている。アレバ社は三菱重工と連携が深く、「フクシマ」の汚染水処理を請け負っている。

 「宣言」は原子力の安全性評価に国際原子力機関(IAEA)活用を奨励した。IAEAは「核の番人」といわれ、原子力の軍事転用を防止するために、1957年に国連の専門機関として設置された。米国の「原子力の平和利用」政策を受け、後発国の原子力開発を援助する目的を持つ。その内実は原子力産業の保護と育成にあるといってよい。
 
 6月20〜24日、IAEAの閣僚級会合がウィーンで開かれる。その前にG20が開かれ、今回のG8宣言と中国、インドなど新興国の思惑が衝突し、一波乱起きそうだ。

 世界のエネルギー政策は「フクシマ」を機に、間違いなく脱原発・自然エネルギーへと流れている。





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