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2011年6月28日 |
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ドイツ、イタリアも「脱原発」 |
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人間の保護第一
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東電福島第一原発事故で拡散し続けている放射性物質は、地球上の大気・海洋・土壌を汚染し、ドイツやイタリアはこのフクシ・マショック≠ノ敏感に反応して脱原発へ舵を切った。
しかし、発生源の日本政府は6月18日、事故収束へ「止める・冷やす・閉じ込める」ことができていないにもかかわらず、20日から始まった国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合を意識して唐突に「安全宣言」を出した。
事故の深刻さを独自の調査で把握してきた米国が、日本に住む自国民に「原発から80キロ圏内の退避勧告」を更新した矢先の安全宣言だ。
国際世界から見た日本政府は「情報隠し」に「ウソツキ」という評判を加え、大野之弥IAEA事務局長の更迭が公然とささやかれている。
民衆力が変える つづけ日本
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6.11脱原発新宿アルタ前アクション |
ドイツは6月6日、2022年までに原発全17基の廃止を閣議決定した。メルケル首相は「原発リスクをコントロールするのは不可能」「人間の保護を第一におく」「未来への巨大なチャンス」と脱原発の理念を訴えた。
メルケル政権の政策は本来、原発推進。02年に社民党・緑の党連立政権が制定した22年までの原発廃棄法を覆し、フクシマ直後も原発の点検と一時停止等で乗り切りを図った。それを押し返したのは民衆の力である。
3月の州議会選挙で緑の党が躍進し、連立与党のキリスト教民主・社会同盟は1勝4敗。労働総同盟(DGB、626万人)は5月までに3回、最大30万人規模の集会・デモを組織した。こうした世論を背景に原発の是非を諮問された倫理委員会は市民参加の公開討論を行い、5月30日に「10年以内に原発を止めるべき」と勧告した。
ドイツでは総発電量の22・5%が原発だ。これを太陽光や風力など再生可能エネルギーに替え、世界に先駆けて持続可能な自然エネルギー社会の構築へ挑戦することになる。
関連産業の反発もあったが、シーメンスはフランスのアレバとの合弁を解消、ロシアのロスアトムとも合弁解消の検討に入った。電力大手エーオンやRWEは風力発電への投資を計画、抜け目なくビジネスチャンスを確保している。
イタリアは6月12、13日に原発(4基)再開の是非を問う国民投票を実施した。そして、国民自らが「原発にさようなら」を決断した。有権者は18歳以上の4700万人、投票率57%と法定の50%を超え、投票者の95%が再開に反対した。
メディア王ベルルスコーニ首相は、国民投票の不成立を画策したが、自らが買春罪に問われ、国民投票はベルルスコーニ不信任の意味をもった。だが、ドイツの脱原発方針が政権交代によって転換されたように、国民投票結果の有効期限を迎える5年後には覆されることもありうる。
スウェーデンが米スリーマイル島事故(79年)後の国民投票でいったんは原発撤廃を決めたが、世論が変わり、現在は発電量の45%を原発に依存している。
イタリアの国民投票の結果に自民党の石原伸晃幹事長は、「集団的ヒステリー」とののしった。無知、傲慢、我田引水、独裁体質がもろに出た。自民党は念願の憲法改正国民投票法案を画策中だが、改正反対が多数を占めたら石原氏は「集団的ヒステリー」と叫ぶのだろう。
ドイツとイタリアの脱原発への国策転換は、戦後米国主導でレールを敷かれた「原子力の平和利用」の欧州版「ユーラトム」(現在15カ国、14 8基)解体の始まりを意味する。ドイツでは30年の議論の蓄積があるとはいえ、今回その直接の引き金となったのはフクシマだ。その日本では、原発推進の政府・原発独占企業の守旧勢力と脱原発・未来志向の国民勢力がせめぎ合っている。
推進派の牙城「原子力村」にとって、ドイツ、イタリアの決定は目の上のタンコブ。その打消しに、「復興」に名を借りた脅迫含みのデマが飛ぶ。今後の政治選択に、「脱原発」か否かが浮上した。
ウソを垂れ流し
ドイツやイタリアの「脱原発」の政治決断に、日本のマスコミは日本国民が同調しないように防止キャンペーンに必死となった。ドイツは原発大国フランス(依存度75%)から電気を輸入する「名ばかり脱原発」であるとか、脱原発によって電気料金が上がりGDPが下がるとか、あるいは石炭や石油など化石燃料依存率が高まり地球温暖化対策が後退するなどと脅迫めいてきた。
陸続きの欧州では電力の輸出入は双方向の関係にある。ドイツはベルギー、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア、ポーランド、スイスに輸出超過、フランス、チェコ等には輸入超過。しかし全体では輸出超過だ。フランスからの電力輸入が絶えても困らないようにネットワークが作られている。
イタリアも総電力量の14・9%をフランスやスイスから輸入している。しかし、そのスイスは原発5基を2034年までに全廃し、再生可能エネルギーに転換する方針を決定している。また、ドイツとの国境アルサス地方のストラスブールにフランス最古のフェッセンハイム原発があるが、市議会は閉鎖を求める動議を可決している。ドイツの脱原発は陸続きの波及力を生んでいる。
電気料金の引き上げ問題も、原発に対する国の財政負担、使用済み核燃料の処分・再処理、汚染水処理、損害賠償等で数十兆円。総コストを比較した場合、火力・水力はもちろん、風力・太陽光など自然エネルギーの方がはるかに安価だ。
汚染水処理だけで20兆円必要といわれ、国家予算1年の収入分が軽く吹き飛ぶ。政府も怖くて簡単には言い出せないだろう。
原発は化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして、地球温暖化対策の切り札として脚光を浴びたが、日本は今回の事故で原子力は制御不可能な危険極まりないエネルギーであることを身をもって知った。
原発54基が全稼動すると、海に廃棄される熱量はたった1日で広島に投下された原爆100発分に相当する(広瀬隆氏)。また、世界の火力発電を全て原発に替えても、CO2を1%も減らせない(小出裕章氏)。
原発の世界市場を支配するのは東芝・ウェスチングハウス、日立製作所・GE、三菱重工・アレバの3大コングロマリット。いわば日米仏3国だ。その中で日本だけが核兵器を保有していないが潜在的保有国。
脱原発は、反独占・多国籍企業、反核・平和の闘いである。
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