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 新社会党
2011年7月19日

  水産特区
     資本に漁業権  全漁連「容認できない」  


 全国漁業協同組合連合会(服部郁弘会長)は7月6日、東京都内で、大震災で壊滅的打撃を受けた漁業者が一体となって復興を目指す緊急全国代表者集会を開いた。
 菅首相の私的諮問機関・復興構想会議(議長・五百旗部真防衛大学校校長)が提言した民間資本参入による特区構想は容認できないとの決議を採択した。


 浜の秩序を崩壊させない

家族に見送られ、出港する「第31幸洋丸」=7月18日正午ごろ、気仙沼港(「河北新報」HPより)

 復興構想会議「提言」の副題は「悲惨のなかの希望」。キーワードは「つなぐ」。人と人、地域と地域、市町村と国・県、東日本と西日本。「共死への理解」から「共生への思い」へつなぐ実践として自衛隊の活動を特筆した。
 
 水産業関連では、「必要な地域」での「特区手法の活用」が目玉。そこで民間企業が漁協と同等に漁業権を取得できる仕組みをつくり、調整に当たる第三者機関の設置を構想している。

 この特区構想の目的は震災で漁港・漁船・養殖施設など水産業の基盤が損壊したなか、「漁場や資源の回復を図る」こと。その手法が漁業者と民間企業の連携だ。

 全漁連は現行漁業法に基づき、定置漁業や特定区画漁業では漁協に地元漁民会社より上位の漁業権を認め、漁業者が漁協の下に協調して漁業を営む体制を守ってきた。

 「提言」はこの仕組みを解体し、漁場管理権を漁協と民間企業の二重管理とするもので、全漁連は全国の漁村と漁業現場に大混乱をもたらし、漁業の復興を妨げるものとして撤回を求めている。

 東北被災3県のうち、特区構想に熱心なのが宮城県の村井嘉浩知事。「提言」を「非常に満足する内容」と手放しで歓迎した。その理由として漁業就業人口の減少と高齢化、資金不足を挙げている。根底に「企業側が海は国民のもので、漁協のものではないと思うのは当然」とする企業本位の思想がある。防衛大学校卒・自衛隊・松下政経塾・県議という経歴からして、もとより漁民の味方ではない。

 水産業の特区構想は演出・財界、監督・農水省だ。07年2月、日本経済調査協議会の「水産業改革高木委員会」は、「魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ」という緊急提言を発表した。

 その柱が@水産資源は国民共有財産、A水産業への参入のオープン化、B水産予算の弾力的な組み替え、の3本。高木とは高木勇樹元農水省事務次官で、委員に日本水産社長ら水産大手の役員が名を連ねている。

 日本漁業の生産額は1990年以降の15年間に遠洋漁業でマイナス45%。一方、沿岸漁業、養殖業の落ち込みは小さく、水産大手は儲からない遠洋漁業から撤退し、儲かる沿岸漁業、養殖業への進出を企ててきた。





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