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 新社会党
2011年7月26日

  原子力損賠支援機構法案
     許すな東電温存と損害賠償の上限設定  


 8月末までの延長国会で、原子力損害賠償支援機構法案や再生可能エネルギー措置法案など原発関連の重要法案が審議に入っている。やらせメールが発覚して社長辞任に追い込まれた九州電力の玄海原発運転再開をめぐり、海江田経産相と菅首相の不協和音から、原発再稼動に当たり2段階のストレステスト(耐性検査)の実施が本決まりになった。

 その矢先の7月13日、菅首相は記者会見で「段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現する」と首相として初めて脱原発≠言い切った。首相の「英断」を歓迎するものの、原発関連法案との整合性などこの震災国会は菅降ろし≠フ政局がらみで混沌としてきた。

 なかでも、損賠支援機構法案は原発政策維持が前提で、事故処理を電気料金の値上げと公的資金(税金)投入による国民負担によって乗り切るものであり、市民の間から法案の廃案を求める声があがっている。


 廃案にしよう

 損賠支援機構法案は、東電の破綻を回避し、東電の株主や銀行など債権者を保護する仕組みを創設する法律である。「被害者への迅速・適切な賠償」とともに、「事故処理に関する悪影響回避」「電力の安定供給」が目的だ。

 原発事故の被害補償制度は1961年制定の「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)に定められ、同法の目的はあくまでも「被害者の保護」。故意・過失の有無に関わらず事業者に賠償責任を負わせる「無過失責任」と事業者に被害の全額補償を求める「無限責任」を定めている(3条)。

 その場合、免責される事由は「異常に巨大な天変地異又は社会的動乱」による被害に限定され(17条)、賠償責任を担保する資金を超える損害は国が事業者に対し「必要な援助」を行うことになっている(16条)。

 政府は今回の事故は免責事由に該当しないと判断している。従って、損害賠償は東電・株主・債権者の責任負担を徹底追及し、東電の会社更生法適用による破たん処理も想定されるべきである。

 東電の損賠額は推定5兆円超。11年3月期の純資産が1兆5581億円、特別損失を積み10年12月比で1兆2000億円以上の減だ。株価は事故前2000円台が下落してこの7月には400円台、時価総額3兆円が吹っ飛んだ。社債は約5兆1000億円、1兆9000億円の緊急融資を受けて有利子負債は9兆5000億円。このため、東電・金融機関・経団連筋から、「東電が倒産したら電力供給が止まる、金融市場が混乱する」との大合唱が上がった。

 こうした中、法案は新たに被害補償を支援する機構を創る。電力事業者11社が負担金を年間3000億円供出(うち東電は1000億円)。これに金融機関の融資と政府の援助(国債)を含めて財源を確保、機構が東電に交付、貸し付ける。

 問題は、電力各社は負担金を電力料金に転嫁できること。政府は原発推進の責任を棚上げし援助する側に回り、回収方法をあいまいにしたこと。さらに原発メーカーの責任は問われていない。このような法案は廃案に、東電は会社更生手続きに則り損害賠償を行え!





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