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 新社会党
2011年10月4日

  東電 原発被害賠償を開始
     日弁連「記載慎重に」  煩雑、出し惜しみ


  東京電力が福島第一原発事故に伴う損害賠償手続きを始めた。9月12日には約6万人の被災個人を対象とした損賠請求書類を発送した。10月からの支払いに備えて、原子力損害賠償支援機構(理事長・杉山武彦前一橋大学学長)が26日に業務開始。

 続いて東電は21日、法人・個人事業者、農漁業者に対する賠償金の算定基準を発表した。いずれも中身は文科省の原子力損賠紛争審査会が8月に発表した中間指針通りのもので、個人向け請求書式は60頁、説明書類が156頁と煩雑、難解であることから被災者は「請求を諦めさせようというのか」と反発。

 日本弁護士連合会(宇都宮健児会長)は予期しない不利益を想定し弁護士への相談を呼びかけている。

 個人向け損害賠償の適用項目は避難・帰宅・一時立ち入り費用、医療費、就労不能損害、精神的損害、健康・放射線の検査費用など。逐一、ガソリン代や日常品購入の領収書、診断書や領収書、給与明細書や源泉徴収書など証拠書類が必要だ。

 たとえば避難は2回を限度に1回1人同一県内5000円、宿泊費は1泊1人8000円が上限、就労不能損害は以前の平均収入から現在の収入を差し引いた額が基礎となる。避難に伴う様々なストレスによる精神的損害は、避難所は1人月12万円、仮設住宅・ホテルは10万円。

 ただし、9月からは5万円に減額。これまでに事業者を含め5万6000世帯15万人に総額1112億円が仮払いされているが、本払いでその分が引かれる。東電の例示では4人家族で手取り231万5000円。しかも、対象者は4月22日までに避難指示を受けた者で、自主避難者は該当しない。

 企業や個人の事業者、農漁業者に対する損賠手続きも同じように煩雑だ。農業者の場合、避難指示に関わる損害と出荷制限指示等に関わる損害、風評被害による損害に3区分。

 必要書類は法人登記簿、住民票、農地基本台帳、家畜の固体認識番号、出荷伝票、在庫伝票、確定申告書、その他と目が回りそうだ。

 しかも、風評被害対象県は6県に限定。東電・政府は損賠費用を出し惜しみ、前例とならないように賠償額を極小化する魂胆。損賠支援機構にしても税金と電気料金値上げによる東電救済スキームだ。

 日弁連は、記載に慎重を期して原子力損賠紛争解決センターへの申立てや訴訟提起の検討を呼びかけている。 





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