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 新社会党
2011年11月22日

  野田首相、世論無視  交渉参加へ協議入り
    亡国のTPP  アジア市場を貪る米日資本


 野田首相は11月13日、ホノルルで開かれたAPEC (アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席し、TPP (環太平洋連携協定)交渉参加に向け協議に入ると伝えた。例外なき自由化によって存亡の危機にさらされる農業関係者はむろんのこと、44都府県、8割の市町村、衆参国会議員363名が交渉参加に「反対」などを意思表示するなか、首相は1日の「熟慮」で交渉参加に踏み切った。

 国民は原発事故と同様、企業第一の政治の不条理を今回も思い知らされた。しかし、TPP協定の国会批准は早ければ2年後、国の基本をTPPに委ねるわけにはいかない。



 米国はTPP交渉の主導役。クリントン国務長官は、12日のAPEC閣僚級会議で「我々は21世紀の戦略的、経済的重心はアジア太平洋地域だと考えている。米国が今後10年間に外交的、経済的な投資をしっかり増やせるかが重要」と述べた。

 アジア太平洋地域における貿易・投資自由化構想は、2020年までにAPEC21カ国に拡大し、その先、AFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)につなげるというものだ。日本がTPP交渉参加の検討を表明したのは10年10月。今回の交渉参加の判断は中国のASEAN (東南アジア諸国連合10カ国)+3カ国(日中韓)構想との決別宣言でもあった。

 日本を含めるとTPP交渉参加10カ国のGDP総計は21兆ドル。日本はその24%(5兆4587億ドル)を占め、米国の65%(14兆5265億ドル)に次ぐ。

 野田首相は11日の記者会見で、「現在の豊かさを次世代に引き継ぎ、活力ある社会を発展させていくためにはアジア太平洋地域の成長を取り入れていかなければならない」と述べた。これは米国の構想に合致。両国ともに国内に失業・貧困・格差を抱え、しかも世界9億人の飢餓人口の上に築かれた大企業の活力と富裕層の「豊かさ」。そのために、アジア太平洋圏をむさぼり尽くそうというのだ。

 TPPは21世紀の、グローバル化時代の通商ルール。財界は、日本経済衰退の危機を克服し、低成長から脱却する打出の小槌としてTPP交渉参加は国益にかなうと大歓迎。例えば自動車産業にとって、関税率83%のベトナム市場の開放は垂涎の的。その他、電機、鉄鋼、海運、小売、商社、建設、金融、証券などが市場確保で活性化づくと期待する。また、自由化により解雇規制の緩和や賃金など労働ダンピングが予想されるが、連合は外国人労働者参入制限を条件にTPP交渉参加に賛成の立場だ。

 TPP交渉参加により、国内では国際競争力強化が叫ばれ、規制緩和と構造改革が加速する。産業別に最大の犠牲が農業。政府は農業は大規模化と戸別所得補償により、TPPとの両立を図ろうとしているが説得力はない。企業化された米豪の大規模農業に価格競争で敵わない。牛肉は1991年に輸入制限が撤廃され関税率が38・5%に下げられた。結果、肉牛農家は3分の1に減り、自給率は10%落ちた。

 日本はすでに12カ国・1地域とEPA (経済連携協定)を締結しており、自由化率は84〜88%になる。手つかずの残された品目は940。コメ、小麦、乳製品などが完全自由化されれば日本の農業は崩壊する。食料自給率13%、農林水産物生産額4・5兆円減、GDP8・4兆円減、失業者340万人―─。昨年、農水省が発表した予測値が現実味を帯びてくる。

 とりわけ震災被災3県の復興へのダメージは大きい。来年度の営農再開地は37%どまり。福島県議会は10月20日、農林水産業と地方が崩壊するとしてTPP交渉参加に反対の決議を採択した。

 貿易立国と野田首相は言うが、日本は企業と資本の自由が極大化した世界に投げ込まれる。米多国籍資本による農地や法人の買収が進み、120兆円の基金を持つ郵政簡保の解体、JA共済45兆円の開放などが迫られるだろう。そこで見落としてはならないのは、TPP参加は復興需要、消費税増税、法人税率引き下げ、原発推進のエネルギー政策など政府・財界が共同して描く成長ロードマップの一環だということ。全体を視野におき、具体的な取組みが必要だ。






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