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2012.3.6
大阪市橋下市長 思想調査
民主主義が危ない 

 「ここまでやるか」。橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会は、国政進出を目指して憲法改悪を柱とする「船中八策」を発表する一方、足元の自治体で教育基本条例や職員基本条例の制定など、労働組合潰しへ異常ともいえる攻撃を仕掛けている。市職員全員(3万4000人)を対象に2月10日から1週間の期間を設定して始められた「労使関係に関する職員アンケート調査」という名の思想調査もその一環。労組・弁護士会・市民などの猛反発を受けて回答集計作業はいったん「凍結」されたものの、大阪から日本を「グレートリセット」(大いなる再起動)することを大目標に掲げる橋下サイドは「解凍」の機をうかがう。大阪発「ファッショ的な橋下政治を許すな」の世論が全国に拡がっている。


 「凍結」から「撤回」へ


 アンケートは、「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて明らかにする」ことが目的。「市長の業務命令」として実施し、「正確な回答がなければ処分の対象となる」と通知された。


 昨年11月の市長選でも、大阪都構想の実現にとって最大の障害と映った市労連(2万8000人)。橋下市長は「労組に対する市民の怒りを代弁」し、「若手職員の告発」を力に、市労連との交渉抜きで、前のめりで思想調査に踏み出した。実施責任者は市特別顧問で弁護士の野村修也・中央大学法科大学院教授だ。

 
 アンケートは22項目。「組合活動に参加したことがありますか」「特定の政治家を応援する活動に参加したことがありますか」「組合に加入していますか」「組合のメリットをどのように感じていますか」「組合に相談したことがありますか」など、踏み絵≠サのもの。思想・信条の自由(憲法19条)、個人の尊重(13条)、労働者の団結権(28条)など憲法違反の調査だ。


 この調査に大阪弁護士会や日弁連は中止を求める声明を出し、府労働委員会は市労連の救済申し立てを受けて、「支配介入に当たる恐れがある」としてアンケート調査の続行を差し控えるよう勧告した。府労委命令は証人尋問のあと4月にずれ込むものと予想される。


 学力テストの市町村ごとの結果発表に否定的な文科省と教育委員会を「バカ」「クソ」呼ばわりする橋下市長。「弁護士の言うことほど日本で一番あてにならない」と批判した。


 調査は実施された。回答集計は「凍結」されたが、その端から、市長部局2万3400人を対象に、業務用メールが私用に使われていないかが調査された。「服務調査」に名を変えた「組合活動、政治活動」調査である。


 また、2月22日、橋下市長は学力不足の小中学生の「留年」検討を市教委に要請した。さらに24日、憲法9条改悪へ「2年間かけて議論し、国民投票にかける」ことを「船中八策」に盛り込む考えを示した。熟議の政策決定ではなく、独断専行、場当たり的だ。


 一方、維新の会幹事長で松井一郎・大阪府知事は23日、府議会2月定例会に、教育目標は首長が決めて教員の懲罰規定を明確にした教育基本条例と公務員の解雇や降格人事を可能にする職員基本条例を提出した。


 社民、共産両党以外の各党が橋下・維新の会に秋波を送る。関西財界も「関西活性化の武器」「大阪から日本を変えたい」「不死鳥になってほしい」と期待を寄せる。日本の民主主義が危ない。
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