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2012.3.13
東電と政府へ
電気代値上げ反対 

 東京電力は1月17日、企業用電気料金を4月から平均17%値上げすると契約事業者に一方的に通知した。また、20日には家庭用料金についても7月から約10%、向こう3年間値上げする方向で国に申請すると発表した。これが通れば、契約電力150kwの中小スーパーは年間約103万円、大口需要家の東京都庁の例では年間約80億円の追加支出となる。何より家庭(契約40A)は、年間約7〜8千円の負担増を強いられる。福島第一原発事故は「収束」にはほど遠く、賠償も除染も進まないなか、安全神話が復活、事故の責任はウヤムヤ、事故のコストは国民に付け回しする東電救済スキームが、国民の知らないところで決められて独り歩きしている。



 企業用電気料金は電力会社と契事業者の相対で決まり、家庭用料金は経産相の認可が必要だ。全国の電力消費の約3割が家庭用、7割が事業用。しかし、料金は企業用が1kw当たり13・7円、家庭用20・8円で、営業利益の9割を家庭用から稼いでいる。「安く安定的な電力供給」を公益的課題に、総括原価方式によって利益を保証されている電力会社にとって「料金値上げは権利」(西沢俊夫社長)なのだ。


 枝野経産相は、東電の値上げ攻勢に「改革が必要」と牽制。料金値上げは中小企業の存続に関わるとする日本商工会議所は、値上げ幅の圧縮へ「最大限の経営努力」を政府と東電に求めた。東電と原子力損害賠るとする日本商工会議所は、値上げ幅の圧縮へ「最大限の経営努力」を政府と東電に求めた。



 東電と原子力損害賠償支援機構は、月内に東電の10年先を見通した「特別総合事業計画」を策定する。そこに東電改革の担保して、電気料金値上げと柏崎刈羽原発再稼働が盛り込まれる。


 支援機構は昨年8月成立の支援機構法に基づいて発足、「東電の過失を不問にした東電救済スキーム」(大島堅一立命館大学教授)だ。と同時に株主や金融機関の責任と原子力政策の見直しを回避した国の責任を不問にするスキームでもある。


 東電サイドは、一時浮上したプラン〈法的整理→破綻コストの株主・債権者・国負担→一時国営→発送電分離・全国送電一体・脱原発・原発推進官庁解体→新体制〉の阻止、「民営・発送配電一環経営・地域別9分割・独占」体制の死守へ動いた。


 今のところ計画策定前の、経産省対東電・財務省・メガバンクの暗闘が伝えられる。経産省は1兆円の公的資本注入により一時国有化=りそな方式を狙う。この線でいけば東電の経営陣は刷新され、新会長は外部から起用されるとことになる。

 だが、事業の分社化、独占体制の維持、5年後の社債発行という線はほぼ固まっているようだ。1兆円の追加融資を求められたメガバンクは、電気料値上げと原発再稼働を条件として要求した。


 全原発の廃炉が先決


 総合特別事業計画は損害賠償と東電経営の黒字化を一体の課題とし、そのために電気料金の値上げと柏崎刈羽原発再稼働は枢要な課題と位置付ける。戦後9電力会社による地域独占体制が確立された1951年以降、東電の料金値上げは8回実施された。今年値上げが決まると、80年4月以来32年ぶり9回目となる。


 値上げの理由として東電は、原発の運転停止による石油、石炭、LNGなど燃料コストの上昇を指摘。これを回避し、損害賠償と黒字転換には原発再稼働が不可欠という循環論法だ。瀬谷俊雄・福島商工会議所連合会長も、福島復興にはタクスヘイブンと電気料金の低廉化を条件に、「そのために福島第二原発の再稼働を視野に入れること」を求めている。


 だが、政府のエネルギー・環境会議コスト等検証委員会が試算したように、原発コストは04年試算の5・3円が8・9円に増えた。少な目に見積もった除染・廃炉費用など事故リスク対応費用を加算したためである。


 これに対して大島立命館大学教授は、事故や損賠、廃炉、原状回復、行政費用など環境コストを除外した発電に直接要するコスト、研究開発・立地対策費用を含む政策的コストの合計だけで原子力は10・25円、火力の9・91円を上回るとみる。


 コスト面からも原発は無用の長物である。営業費用に事業報酬(利潤)を加える総括原価方式の見直しも必要だ。発送電分離、送電線の開放によりPPS (特定規模電気事業者)の参入を促せ。


 習志野市議会 値上げ反対意見書


 千葉県習志野市議会(関桂次議長)は2月22日、「東京電力株式会社の電気料金値上げ方針に反対する意見書」を採択し、野田首相らに提出した。

 
 意見書は、1月17日の平均約17%値上げを契約事業者に一方的に通知したことに対し、「利用者に責任を負わせる姿勢は断じて許すことはできない」と批判、国に反対するよう求めた。


 また、個人向け電気料金の値上げを国に申請する動きについても、「消費が停滞し国民生活と経済情勢は悪化の一途をたどる」として、国に認可しないよう求めている。
 
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