石原都知事が4月16日、米国ワシントンの反共財団「ヘリテージ」で講演し、都が尖閣3島(魚釣島、北小島、南小島)を個人地権者から購入するとぶち上げ、予告通り物議を醸した。今年は日中国交正常化40年、この間、領有問題棚上げを了解してきた日本政府は「国による領有もありうる」と一歩踏み出した。石原知事は得意満面だが、日中間に荒波が立つ。
尖閣3島を都が購入?
講演での石原知事は首相気取りだった。しかし、3島の購入者は国でも石原個人でもなく東京都。それでいて、石原知事は「日本人が日本の国土を守ることに何か文句がありますか」と超然の態度を装った。
仮にこうした公私混同・越権・多重人格発言を首相や閣僚が口にしたら、マスコミは黙ってはいないだろう。外交に責任を持たない都知事の放言では済まされず、現実味があり、マスコミの批判は低調気味だった。
尖閣諸島はいつでも火薬庫になりうる。日本、中国、台湾が「固有の領土」と主張し、その実効支配を巡り日中が牽制し合っている。
石原発言は、大衆受けした。中山石垣市長が代弁するように、日本固有の領土で個人の所有地を国が買おうが都が買おうが勝手だろう、というわけだ。そこには日中間の歴史、外交、軍事、地政学への配慮はない。
日本政府は39の離島に名を付け、その23を国有財産化したが、尖閣諸島周辺は中国との摩擦を避けて除外した。こうした過去40年間の積み上げのある日本の対中政策を、石原発言は「弱腰」としてその清算を求め、政府はこれに屈した。
自民党極右の青嵐会の尻尾を引きずる石原知事だが、米国保守勢力とも親密だ。今回のワシントン講演は、「日米同盟」が主題だった。中国の海洋進出に備え、在沖米海兵隊のグアム移転、北マリアナ諸島テニアンへの自衛隊駐留など米軍再編が進む。防衛省は尖閣諸島に無線中継基地建設計画を温めている。石原発言は、米軍再編の手の平で「政府に吠え面をかかした」にすぎない。
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