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東京電力本社 |
東京電力と経産省の原子力損害賠償支援機構は4月27日に東電の一時国有化を骨格とする「特別総合事業計画」を発表し、政府は5月9日にこれを認定した。一時国有化といっても日本航空のように破綻処理後に事業を再生するのではなく、03年のりそな銀行国有化による破綻前の再生策を選択した。その大義名分は「電力の安定供給」だ。そのために原発事故の責任を一切問うことなく、新生東電を「第二の創業」と位置づけ、公的資金の注入、電気料金の値上げ、原発再稼働、経営合理化の4本柱で乗り切りを図ろうという政府と東電・電力業界、金融機関・財界一体の計画だ。
新生東電は6月の株主総会で正式に発足する。支援機構が約1兆円の株式を引き受けて50%超の議決権を取得。その時点で、取締役の「指名」、事業の「監査」、役員の「報酬」に関する3委員会を設ける委員会設置会社に移行する。すでに次期会長に支援機構の下河辺和彦運営委員長、代表権を持つ社長に広瀬直己常務が内定している。
予定された再生期間は2010年代半ばまで。2014年3月に1067億円の最終黒字を見込み、15年以降に社債発行に漕ぎつけるという「10年戦略」だ。その日に向けて電気料金の値上げを14年3月までの3年間と期限を定め、料金収益の9割を占める家庭向け平均10・8%の値上げを5月11日に申請した。
家庭向け料金改定の原価計算は、柏崎刈羽原発の再稼働が前提だ。枝野経産相は「値上げと再稼働は別問題」と発言したが嘘、計画に明記されている。1号機の再稼働は13年4月、7号機が翌5月、2号機は15年秋を予定。広瀬次期社長は「原子力は国のエネルギー政策の大きな土台」と、再稼働の先頭に立つ決意を表明している。
大惨事後の東電改革に発電と送配電分離、地域独占の解体、料金の総括原価方式の見直しが期待されていた。経産省は前向きに検討すると伝えられているが、計画では「分散型電源の導入」「他社電源も視野」と発電・販売の自由化を視野に入れながら、送配電・小売部門を「社内カンパニー」に移行する。送配電部門は東電の分社に委ねられ、地域独占の実体は温存される仕組みだ。
もっとも、そうした大改革は東電再生が成った後の話。「不良債権化した原発」(金子勝慶応大学教授)と莫大な損害賠償を抱え、コスト捻出に地域独占も総括原価方式も手放せないだろう。
損害賠償について、計画は「親切・迅速・丁寧・誠実な実行」をうたい、賠償額2兆5462億円を見積もっているが、専門家の計算ではその倍以上が見込まれている。騙されてはならない。
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