関西電力大飯原発3、4号機の再稼働へ政府・電力各社・財界がヨーイドンの配置に着いた。5月30日、野田首相は同日の関西広域連合の結論を受けて、関係閣僚会議を開き、再稼働へ「最終的に私の責任で判断する」と表明した。原子力規制庁設置関連法案が前日審議入りした矢先、安全対策は「暫定的」とうやむやのまま、国民に電気料金値上げを押し付けて再稼働に走る「原子力ムラ」に国民の怒りはいや増すばかりだ。
野田首相は関係閣僚会議のあと、「原子力発電は日本経済の安定と発展のため引き続き重要だ」と述べた。この記者会見のポイントは「引き続き重要」のくだり。もはや「脱原発」「脱原発依存」や「将来のゼロ」はありえないと宣言したものだ。
2府5県2市が参加する関西広域連合(会長・井戸敏三兵庫県知事)も「事実上の再稼働」を容認した。原発14基を抱える福井県(西川一誠知事)は再稼働の急先鋒。電源三法による交付金や核燃料税を独り占めしたいとの思惑が見え見え。再稼働に慎重だった京都府や滋賀県、大阪府市に対し関西経済3団体が事前に猛烈な工作を行い、橋下徹大阪市長などは簡単に軍門に降ってしまった。
与党民主党の脱原発派には、労組が恫喝。5月29日の中部電力労組大会で、来賓挨拶した東電労組の新井行夫委員長は「裏切った民主党議員には報いをこうむってもらう」と次の選挙では推薦しないと脅しをかけた。
東電は6月27日の株主総会を機に一時国有化に移行するものの、労使関係は温存される。黒字化を見込む2013年度には職員の給料を上げ、勝俣恒久会長ら現経営陣は関連会社や団体へ天下ることが決まっている。
政府は、国民の信頼度ゼロとなった内閣府原子力安全委員会や経産省原子力安全・保安院を統廃合した原子力規制庁設置を前に、駆け込み再稼働に走った。関連法案は大幅修正が見込まれ成立すら藪の中。それでも福井県知事の求めに応じて特別監視態勢をとる。しかも規制庁設置までの、暫定的な安全対策となる。
無責任体制を地で行くなし崩し再稼働。夏場の電力供給に間に合わせるための対応というが、むろん真実ではない。値上げの認可を融資の条件とする銀行の注文を最優先した結果なのだ。 |