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2012.8.28
噴き出す領土・戦後補償問題
言葉だけ「反省」日本 

 
 今年の8月15日は領土問題と戦後補償問題を焙り出す特別の日となった。中国・香港の「保釣行動委員会」を名乗る民間団体活動家が尖閣諸島の魚釣島に上陸し、入管難民法違反容疑で逮捕、2日後に強制送還された。


 この日、韓国では解放と独立の「光復節」。李明博大統領は演説で日本軍慰安婦被害者の問題に触れて、「2国間の次元を超えた戦時の女性人権問題であり、人類の普遍的な価値と正しい歴史に反する行為だ」とし、「日本の責任ある措置」を求めた。 


 また8月10日、李大統領は現職大統領として初めて竹島(韓国名「独島」)に上陸し、「(独島は)私たちの領土であり、命をかけて守らねばならない」と固い決意を表明。

 さらに8月14日、忠清北道での会合で、「(天皇も)韓国を訪問したいならば独立運動をして亡くなられた方々のもとを訪ね、心から謝罪すればいい。何カ月も悩んで『痛惜の念』などという言葉一つを見つけて来るくらいなら、来る必要はない」と異例の発言をした。


 中国と韓国が突きつけた領土問題と戦争被害者への保障問題。その背景には、朝鮮を植民地化し、中国を侵略した紛れもない日本の加害の歴史を、過去67年間、言葉だけの「反省」で流してきた日本政府への鬱積した憤りがある。


 野田首相は8月17日、「領土問題は国家主権に関わる問題なので不退転の決意で体を張って取り組みたい」と述べた。


 日本の領土問題は、尖閣諸島と竹島の他、2010年にロシアのメドベージェフ大統領が訪問した北方4島問題がある。竹島は韓国が、北方4島はロシアが実効支配。尖閣諸島は日中双方が「固有の領土」を主張する中、石原都知事が購入を表明、追いかけて政府が国有化方針を打ち出した。


 魚釣島に上陸した香港の活動家らの強制送還は「賢明な措置」だが、政府は今後に備えて海上保安官に警察権を与える海上保法庁法改正など法整備と平行して自衛隊出動の本格的検討に入る。


 日本が尖閣諸島の領有を決定したのは日清戦争の最中のこと。今回の中国民間人上陸にしても、直接には排外的思想を誇示する石原都知事の購入発言と国有化方針が引き金となった。日本政府は、ナショナリズムに与するのではなく「対話と協議で問題を解決する正常な軌道に戻す」(中国政府)よう意を尽くすべきだ。


 竹島は韓国併合の5年前、韓国の外交権を奪った1905年に、日本の領土に編入された。戦後、竹島は韓国に取り込まれ、1965年の日韓国交正常化の際には問題は棚上げされたものの、韓国の実効支配が続いている。


 日本政府は、李大統領の竹島上陸、とりわけ天皇に関する発言を「遺憾」として国際司法裁判所(ICJ)への提訴、日韓通貨交換協定の破棄、韓国の国連安保理非常任理事国入り不支持など制裁方針を明らかにした。


 韓国にとって独島は独立のシンボルだ。韓国憲法裁判所が元慰安婦の賠償を求めるよう政府を縛り、李大統領はこれに沿って韓国解放の正当な道筋に立ったといえよう。恥ずべきはそれに応えられない日本政府だ。

 その日韓両国の背後に米国がいる。アーミテージ元国務副長官とナイハーバード大学教授が8月15日に3回目の対日政策提言を発表した。より強固で平等な日米同盟を構築し、自衛隊と米軍の共同・相互運用能力の向上を求めている。中国の監視が目的。また、原発再稼働、TPP参加まで求めている。アジアを分断支配する頭越し介入だ。
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