4月にモロッコで起きた米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ墜落事故をめぐり防衛省は8月28日、副操縦士の「判断ミス」とする分析評価結果を公表した。これは米国防省の「人的ミス」とする調査結果を追認するもので、10月に米軍普天間飛行場への配備を予告されている沖縄は、日米両政府の「出来レース」と猛反発、9月9日に県民大会を開き配備反対の姿勢を強めている。
ヘリと飛行機の両機能を持つオスプレイは、米国防省の専門家が公然と指摘する欠陥機。@通常ヘリに備わっているエンジン停止後の自動回転機能(オートローテーション)の欠如、A下降時に回転翼に気流が発生し失速する危険性がある、B左右にローターがあり操縦が不安定になる、C複数飛行で発生する渦巻きで制御不能になることがある、D油圧配管などが複雑で不具合が生じやすい、E着陸時に激しい下降気流が発生する、などが指摘されている。
このため、米国では住民の要求を受けてハワイ州の2空港での訓練計画は取り下げとなり、ニューメキシコ州の空軍基地での低空飛行訓練が延期された。
オスプレイは普天間飛行場に24機配備が既定方針。普天間は海兵隊ヘリ部隊と航空部の基地で現在常駐機が57機、これに艦載機など外来機が頻繁に離発着する。03年11月に上空から視察したラムズフェルド国防長官が「事故が置きないのが不思議」と述懐した「世界一危険な飛行場」だ。基地の周囲に9万人が暮らし、学校や病院など公共施設が120。そこへ事故率の格段に高いオスプレイが持ち込まれる。
沖縄におけるオスプレイの飛行訓練区域は離島に分散され、全島69カ所の着陸帯(ヘリパッド)が提供される。6月に米軍が発表した配備・運用に関するレビューでは、飛行訓練域は日本中25都県33市町村に及ぶ。
対米追随の日本政府
問題は日本政府の「はじめに配備ありき」の姿勢だ。野田首相は「安全性が確認されるまでの間、日本でのいかなる飛行運用も行わない」(7月26日)と述べたが、米国の「安全宣言」を確認して運用に踏み切る。
米国追随を国の基本方針とする日本。野田首相は「配備は米政府の方針であり、同盟関係とはいえどうしろこうしろという話では基本的にない」(7月16日)と開き直っていたが、真意は「何といっても日米安保が軸。米国がアジア太平洋地域に回帰している動きは歓迎することだ」(6月30日)にあった。
米軍再編に伴い海兵隊は沖縄、グアム、ハワイ、オーストラリア、フィリピンに展開する。普天間飛行場の代替としての名護市辺野古移設はその米軍再編の要。辺野古新基地へのオスプレイ配備は絶対条件として「密約」された。だが、新基地構想が暗礁に乗り上げ、現状維持を続ける普天間飛行場にオスプレイが飛来する。
野田首相も日米安保条約・日米行政協定を金科玉条に政権を維持している。元外務相国際情報局長の孫崎享氏は近著「『戦後史の正体』で、安保条約締結を指揮したダレス国務省顧問(当時)の「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保する、それが米国の目標である」という言葉を引用し、日本は50年以上、米国の顔色を見て態度を決める対米追随を続けていると指摘する。米国の意向より国民のいのち優先の政治へチェンジしたいものだ。 |