「大間原発ノー」。毎週金曜日の首相官邸前行動で、「原発ゼロ」の焦点に電源開発(Jパワー)の大間原発(青森県大間町)建設問題が急浮上した。政府のゴーサインを受けてJパワーによる建設工事が再開されたのは10月1日。大間原発は全炉心にプルトニウムとウランの混合酸化燃料を装荷するフルMOX原子炉だ。商業用としては世界初。出力138万3000キロワット、年間1・2トンのプルトニウム消化能力を持ち、2014年の運転開始を目指しての工事再開だ。
Jパワーの北村雅良社長は、県と地元3町村の理解を得て、「大間原発は原子燃料サイクルの一翼を担う重要な発電所」と述べた。
全国の原発50基中、現在稼働中は大飯3、4号機の2基。福島第一原発事故後、3基が建設を中断、新増設計画が9基。政府は閣議決定抜きの「革新的エネルギー・環境戦略」を発表後、建設中原発の工事再開を認めた。
同戦略は2030年代の「原発ゼロ」を目指し、@運転を40年に制限、A再稼働は原子力規制委員会が安全確認をしたものに限定、B新増設は行わない、という3原則を適用することになっている。
大間原発の廃炉予定は2054年で、2030年代に「原発ゼロ」の大前提と矛盾する。また、2030年代にゼロならば、使用済み核燃料の再処理事業は不要となるはずだ。この矛盾を解消する役割を期待されているのが原子力規制委員会と自民党政権の復活だ。
規制委員会は、来年7月までに新安全基準を策定し、順次再稼働させることを射程におく。そして10月3日にまとめた「原子力災害対策指針」で、事故発生の際に防災対策を重点的に充実すべき地域を半径8〜10キロ圏内から30キロ圏内に拡大した。田中俊一委員長は、30キロ圏内の自治体を含めて事業者と安全協定を結び、各自治体が防災計画を策定することを条件付けた。
同指針の改定は原子力安全員会の引継ぎ事項。福島第一原発事故で避難を余儀なくされた飯舘村は、50キロ離れた地点にあり、30キロでも不十分。事故の教訓がまったく生かされていない。
さて、大間原発の30キロ圏内には青森県の大間町、風間浦村、佐井村、むつ市、それに津軽海峡の対岸の北海道函館市が入る。総人口35万。青森県の自治体は、「明るい兆し」「活況が戻る」という地元事業者の「希望」を背景に建設には賛成。
一方、函館市の工藤寿樹市長は、「国の設置許可は福島第一原発事故以前の安全神話に基づいたもの」と一蹴、50キロ圏内を念頭に青森県側9万人、北海道側37万人が避難を余儀なくされるとして、2013年3月までに防災計画を作る考えはないと述べ、建設差し止め訴訟で争う態度を表明した。
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