国家公務員が休日に職場から離れた地域で共産党機関紙『赤旗』号外を配布し、国家公務員法違反容疑で逮捕・起訴された事件で最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は12月7日、元社会保険事務所職員の堀越明男さん(59歳)を無罪と判断した。しかし、警察官舎で共産党のビラを配布した元厚労省課長補佐の宇治橋眞一さん(64歳)は有罪とし、罰金10万円の不当判決が確定した。この差別判決自体が不当だが、堀越さんの無罪確定は公務員の政治活動を一律に禁止した過去の判例に風穴を開けるものとして評価できる。
堀越さんの逮捕は03年11月で一審有罪、二審が逆転無罪。宇治橋さんは05年9月に逮捕され、一審、二審とも有罪だった。
最高裁は「表現の自由は民主主義を基礎付ける重要な権利」「憲法は国民に政治行為の自由を保障しており、公務員の政治的行為の禁止は必要やむをえない限度にとどめる」と憲法理念を正当に引用。その上で、公務員の政治活動の制限について「職務遂行の中立性を損なう恐れが実質的に認められる行為」に限定した。
具体的には「管理職的地位かどうか」「職務権限の裁量の有無」「勤務時間内かどうか」などを挙げた。2人に対する判断の相違は、宇治橋さんが課長補佐で「管理職的地位」にあったことによる。欧米に遅れた認識だ。
事件は小泉政権下のイラク派兵に、抗議の世論の高まりを背景に発生。公務員の政治活動の萎縮を狙った異常捜査による事件だ。
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