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2013.1.15
バブルと借金 
危ういアベノミクス 

 
 昨年末の特別国会で第二次安倍内閣が発足し、「危機突破内閣」と命名、「強い経済の再生なくして財政再建も日本の将来もない」とアベノミクスの実行を宣言した。早々と民主党政権に見切りをつけていた市場は引き続き円安・株高をもって歓迎、安倍政権は1月末開会予定の第183回通常国会でまず10兆円規模の12年度大型補正予算を組み、5月上旬に13年度予算の成立を目指す。当面、領土、靖国参拝、教育、憲法など「安倍カラー」やTPP交渉参加などは抑制し、7月の参院選に「圧勝」して安倍独裁体制の確立をめざして駒を進めるだろう。この7カ月間に戦後日本の憲法体制の命運がかかっている。


 生活は置去り


 安倍政権が短期政権に終わるかどうかは「経済再生」の成否次第だ。喫緊の使命はデフレ脱却。そのために安倍首相は3つの矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の推進をあげた。


 内閣の布陣も経済再生、デフレ脱却・円高対策、震災復興、国土強靱化と課題ごとに担当を置いた。経済再生の司令部は経済財政諮問会議と日本再生本部の二本立て。諮問会議は小泉政権で官邸主導を牽引した組織でマクロ政策を、再生本部はミクロ政策を担う。


 両組織を各省庁出向組が裏方を務める内閣官房と、内閣参与が支える。参与には元小泉首相秘書官の飯島勲、元財務次官で読売新聞本社監査役に天下りしていた丹呉泰健、元外務次官の谷内正太郎、米イェール大学名誉教授の浜田宏一ら異色メンバーを揃えた。


 また再生本部に産業競争力会議を設置し、委員に竹中平蔵元経済財政相を加えた。竹中氏は小泉諮問会議の参謀役、浜田氏もオブザーバーを務めた。アベノミクスの司令塔を貧困と富の膨張をもたらしデフレを法制化した小泉人脈で固め、総力戦態勢を布いた。


 そのアベノミクスに、市場(という投機マネー)がダボハゼのように食らいついた。内閣発足翌日の12月27日の為替は1ドル=85円64銭、12月19日に1万円台に回復した日経平均株価はこの日1万322円98銭と円高・株安を更新。時価総額も28日には2011年3月11日以来となる300兆円台に乗せた。


 この一時の安倍効果により金融機関や企業の株式含み益は改善したが、実体のない空景気。米倉経団連会長は「金融緩和だけではデフレ対策への効果はない」と述べ、規制緩和や大規模な財政出動を求める。
 大胆な金融緩和について、安倍首相は日銀による国債の無制限の直接引き受け案はさすがに引っ込めたが、日銀に対しインフレ目標2%達成へマネタリーベースの拡大を求める。機動的な財政とは国債発行の44兆円枠にこだわらない国土強靭化財源の捻出だ。まさに「借金だらけのアベノミクス」である。


 そして経済成長(名目)の目標は3%以上。この目標数値は、昨年8月10日、3党合意で成立した消費税増税法の付則18条(景気条項)に記載された数値。安倍首相らは「景気が悪ければ上げない」と参院選をにらみ両構えだが、「デフレ・増税・緊縮財政」派の財務省サイドが黙過しないだろう。


 その判断の期限は10月、状況判断は4〜6月の経済成長率だ。1月21、22日の日銀金融政策決定会合でインフレ目標2%に合意→金融緩和→円安(90〜100円台)→輸出・投資・公共事業拡大→GDP増→株価・雇用増という見取り図は描くが、10月までの効果は土台無理な話だ。


 むしろデフレ不況時の増税は、1997年の橋本増税によるデフレ突入の拡大再生産となる。バラマキ公共事業も「束の間の安倍バブル」をもたらすが、間違えるとインフレに歯止めがかからなくなり、長期金利が高騰して一気に財政破綻を招きかねない。


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