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2013.1.29
ダメ!生活保護制度改悪 
「生きていけない」 


 安倍政権による社会保障制度改悪の一の矢として生活保護制度の改悪案が浮上した。厚労相の諮問機関である生活保障審議会の2部会(生活困窮者支援特別部会、生活保護基準部会)が1月16日、制度・基準の見直し案を公表。長引くデフレ不況下の窮乏化により生活保護受給者は214万人、156万世帯、生活保護費3・7兆円超に増え、安倍政権は総選挙の公約どおり保護費の切り下げに着手した。その一方で、公共事業など企業の活性化に底なしのカンフル注射を行いデフレ脱却を目指す安倍政権。大企業・金融機関にはボーナス、庶民には自立・自助の痛みを強いる政策の本性がむき出しになった。


 憲法破り 福祉から国民生活を切り下げ
 

 生活保護制度の改悪の第一は対象者を減らすことが狙い。就労可能とみなした人に本人の希望とは関わりなく「低額でもいったん就労」を求める。また、現行法では支給の要件に扶養可能な親族の有無はないが、扶養義務者になぜ扶養できないかの理由を求める。さらに、生活保護費は食事、住宅、水道・光熱費、医療など8種類の「扶助」から成るが、その支出状況の調査権を自治体に加える。


 こうした制度改悪の背景に、「働いているものが損をする」「働けるのに働かない受給者の自立が進まない」という性悪説がある。それでも働けるのに受給している「不正受給者」は0・4%に過ぎない。
 働きたくても働けなくなった人の事由は、ケガや病気、リストラによる心の病、老齢、障がいなどさまざまだ。それを自治体の窓口が丁寧、適切に判断できるのか。自治体の水際作戦と、世間の冷たい目を意識して、生活保護水準以下の低所得者でありながら、3割が受給を忌避しているといわれるのだ。


 生活保護基準の見直しは支給額の削減が狙いだ。一般世帯の収入を10ランクに分類し、下から1割の低所得世帯の収入と生活保護世帯を比較して、一般低所得世帯の収入を上回っている生活保護費を削減するという人を人と考えない政策だ。
 その対象が夫婦と子1人の3人世帯、夫婦と子2人の4人世帯、20〜50代の単身世帯、母親と子1人の母子世帯。生活保護費が一般低所得者の収入を上回る額が最も多いのが夫婦と子2人の4人世帯の場合で、2万6000円。18万6000円と15万9000円とのあくまでも低所得同士の比較である。
 支給額削減の対象にされた以上の4類型は、自立して働けということだ。そして高齢者は「死ね」だ。そこには貧富の格差の議論は吹き飛んでいる。


 一人も餓死させない


 生活保護水準の切り下げは国民全体の生活水準の切り下げに連動する。生活保護水準を下回らないとされる最低賃金も切り下げられる。公立校157万人(全児童の25%)を数える就学援助の打ち切りが10万、20万人の単位で増える。国民健康保険料の減免や介護保険料・利用料の減額がなくなる。住民税の非課税限度額が下がって新たに課税される人が増える。
 その結果、医療費の自己負担限度額や障害者福祉サービス料、保育料負担が増える。生活保護事務を取り扱う自治体の仕事量が増える中、公務員の削減と賃金抑制、アウトソーシング化と負の連鎖がどこまでもつきまとうことになる。
 

 生活保護費は餓死を予防する最後のセーフティネットだ。政府はこの「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)を保障するセーフティネットを守る義務がある。それなのに安倍政権は、1月28日開会の通常国会で憲法違反の法案と予算案を提出しようとしている。13春闘は文字通り国民生活防衛の「国民春闘」とならざるをえない。

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