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  4. 2013.02.05
2013.2.5
「強い日本」を創る 安倍カラー隠し 
姑息な所信表明 


 第183通常国会が1月28日に開会され、安倍首相が所信表明演説を行った。会期は6月26日までの150日間、13年度予算案の編成がずれ込み、演説は経済再生、震災復興、外交・安保に絞られた。憲法改定や集団的自衛権など「安倍カラー」や環太平洋経済連携協定(TPP)、原発再稼働は参院選を意識し、農業関係者や原発被災者を刺激しないよう配慮して一言も触れなかった。具体的方針は予算案提出後の施政方針演説で明らかになるが、具体論の表明抜きで次々と布石を打つ政治手法は姑息というほかない。


 演説のゴール(目標)は「強い日本」を創ること。戦前、資本家と地主を代表する政友会に所属し、戦後は民主党総裁として首相を務めた芦田均(1887〜1959年)の言葉を引き「自らへの誇りと自信を取り戻そう」と呼びかけた。この思いにこそ憲法改悪を目指す「安倍カラー」が塗り込められている。


 安倍首相は「強い日本」は経済、軍事の強さとそれを支える国民精神の涵養(教育)によって実現すると考える。一度挫折を味わった反省から「丁寧な対話」と「真摯な国政運営」を約束。「国民国家のために再び我が身を捧げんとする私の決意の源は深き憂国の念」と国家主義的な心情を吐露した。

 その憂国の士≠ノ日本は「危機」に陥っていると映る。経済の危機、復興の危機、外交・安保の危機、教育の危機―この4つの危機の突破へ、「額に汗して働けば必ず報われる」と語りかける。そこには「真っ当な社会」を壊し続けてきた自民党政治の真摯な反省はない。「国民は額に汗して働き、企業第一の国家に奉仕せよ」という本音が透けて見える。


 強い経済の再生はアベノミクスの「三本の矢」に明らかだ。金融緩和は2%のインフレ目標と無期限の金融資産買い取りを合意して日銀に責任を負わせた。機動的な財政出動は、機動的な国債発行に帰着するが、同時に「中長期の財政健全化に向けて、プライマリーバランスの黒字化」を目指すと財務省の注文を付言した。


 復興の危機とは復興の遅れ。被災地の「生きる希望と笑顔を取り戻すこと」が「犠牲者の御霊に報いる道」と復興の本旨から外れ、英霊によって戦後の平和の礎が築かれたという靖国思想にオーバーラップした。


 外交・安保は日米同盟を「日米の絆」と定義し、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に立脚した戦略的な外交」と安倍色を打ち出した。この戦略から、北朝鮮に対しては拉致問題の解決を使命に「対話と圧力」を貫く。沖縄問題は、普天間基地の県内移設を前提に進める。
 こうした安倍ドクトリンこそ、憲法改悪への道を掃き清める。

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