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2013.3.12
アベ施政方針演説
国民そっちのけ 


 政権発足から1カ月後の2月28日、安倍首相は衆参両院で向こう1年間の政治姿勢を示す施政方針演説を行った。ちょうど1カ月前の所信表明演説では抑制していた「安倍カラー」を鮮明にし、TPP (環太平洋経済連携協定)交渉参加、原発再稼働、憲法改定へ国民的論議を呼びかけた。


 施政方針演説は所信表明演説のまさに続編。その所信表明演説は「『強い日本』を創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です」で終わっていた。施政方針演説はこの文言から始まる。震災復興、力強い日本経済、強靭な国づくり、教育再生、原則に基づく外交・安全保障―。そこに「自立・自助」の精神が貫かれ、集約点は「国家・国益」だ。

 「安倍カラー」とは「世界で一番企業が活躍し易い国」「世界で最もイノベーションに適した国」「世界一安心・安全な国」を目指す政治。独占企業とゼネコン本位の政治、「我が国の領土・領海・領空」の「危機」から「国益」を守り、「強い日本」を創る政治。そのイデオロギーは経済面では新自由主義、政治面では国家主義。「富国強兵」政策の現代版だ。

 この1カ月間に安倍内閣の支持率は70%超に上昇した。何があったのか。アベノミクス一の矢(金融政策)で、政府・日銀が2%の物価目標を明記した共同声明を発表し、消極的な白川総裁を早期辞任に追い込んだ。二の矢(財政政策)で、総額13兆円超の12年度補正予算を成立させた。三の矢(成長戦略)で、TPP交渉参加に向けて米側と例外を確認。また、アベノミクスの司令塔としての経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議は政府・財界一体の態勢を整えた。


 さらに、オバマ米大統領との首脳会談で「日米同盟の完全復活」を宣言することができた。なかでも「アベノミクス期待」による円安・株高が、「神風効果」をもたらしたことが大きい。





 社会保障は番外


 演説は、成長戦略に多くを割いた。海外の成長を取り込むことを呼びかけ、自らカバンに詰め込む商品を紹介した。安倍首相は日本株式会社の社長だ。

 TPP交渉参加表明にあたり、貿易・投資のルールは日本が創るから大丈夫と言わんばかり。犠牲となる農業は、「攻めの農業」「強い農業」に置き換える。その他、原発再稼働、聖域なき規制改革、公務員制度改革、「頑張る人たちの手取り(報酬)増」など全てが成長戦略に動員される。

 得意の教育再生は、6年前に自ら成し遂げた改悪教育基本法が前提。いじめ対策として道徳教育の充実、教育委員会制度の改革、世界トップレベルの学力向上、6・3・3・4制の見直しを挙げた。

 外交・安保では、「戦略的な外交」「普遍的な価値を重視する外交」「国益を守る主張する外交」の3つの原則を表明。基軸は日米同盟の「不断の強化」、日米安保は「抑止力という大切な公共財」、普天間基地の辺野古移設は日米合意に従って進めると宣言した。また、11年ぶりに防衛費を増額し、防衛大綱の見直し、国家安全保障会議設置の本格的検討に着手する。

 
 結語は「憲法改正に向けた国民的議論を深めよう」。社会保障への言及は「自立・自助を第一に共助、公助を組み合わせる」とごくわずか。目線はぜんぜん国民に向いていない。

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