東京電力福島第一原発の停電事故は発生から29時間経った3月20日未明に復旧した。東電は使用済み核燃料プールを冷却する仮設配電盤にネズミのような小動物の死骸を見つけて、25日に至ってこれが停電の原因であると発表した。ずさんな管理によるあわやの事故に、原発事故そのものが収束していないことを強く印象付けた。
仮設配電盤は1、3、4号機と共用プールの使用済み核燃料を冷却する装置に接続されていた。1号機392体、3号機566体、4号機1533体、共用プール6377体、合計8868体の使用済み燃料棒がある。それを冷却する電源が長時間止まれば、再臨界が始まり、核反応の暴走を起こすところだった。
今回の事故を放射性物質の影響のない「事象」と呼ぶ東電。停電公表の遅れについて、石崎芳行福島復興本部代表は「会社全体の感度が鈍かった。住民の不安への思いが不足していた」と反省の弁を述べた。また、尾野昌之原子力・立地本部長代理は「3、4号機は今月中に、共用プールはもう少し後に専用の配電盤につなぎ替える準備を進めていた」と釈明した。
停電情報が福島県や周辺市町村に届いたのは発生1時間後、マスコミ発表は3時間後のこと。それは東電の感度の鈍さというよりも、地域住民が眼中にない体質、トラブル隠しが常習の隠蔽体質が事故後も何ら変っていないことの証だ。
東電は2年前のあの過酷事故の原因を地震ではなく、巨大な津波による「津波主因説」をとっている。会社の責任を回避し、原発を再稼働させ、損害賠償への影響を小さくするためだ。
東電は国会や政府とは別に独自に事故を調査した。その報告書でも、地震による外部電源喪失について「ちょうど工事をしていた」と言い訳をしている(塩谷喜雄『「原発事故報告書」の真実とウソ』)。東電発表を鵜呑みにすることなく、情報を常時、徹底開示させることが先決だ。
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