防衛省は姑息だ。3月22日、沖縄防衛局は米軍普天間基地の移設先として日米合意された辺野古沿岸の公有水面埋め立て申請書を地元名護市の県北部土木事務所に、それも抜き打ちで提出した。後に576件の「不適切」が指摘された環境影響評価(アセスメント)提出のときもそうだった。2011年12月28日、沖縄防衛局職員が段ボールをよりによって県庁守衛室に搬入した。よほど沖縄県民の目が恐いのだろう。日米同盟を最優先し、集団的自衛権行使に踏み込んで沖縄に基地を固定化し、米軍と自衛隊が半永久的に共同使用しようとする軍事方針が安倍政権で輪をかけて露骨になった。
日米同盟第一の安倍政権
普天間基地の県内移設には県、県知事、41市町村を含めオール沖縄が反対している。他方、辺野古移設にこだわる政府の説得材料は、危険な普天間基地の固定化を回避すること、沖縄の基地負担の軽減することの2点。1996年のSACO合意以来、歴代政権が繰り返してきた口実だ。17年経った今も何も変わっていない。
今回の埋め立て申請は、予定通りに運ばれた。安倍首相は2月22日の日米首脳会談で、「普天間基地移設と嘉手納基地以南の土地返還計画を早期に進めていく」とオバマ大統領に誓っている。そして、訪米前の2月2日、沖縄を訪問した首相は仲井真知事に、13年度予算案に復興策として3100億円を計上したこと、辺野古沿岸の埋め立て申請は訪米前には考えていないと述べ、暗に辺野古移設推進の考えを表明した。
といって我部政明琉球大学名誉教授も読み取るように、安倍首相には「沖縄の人々に向き合うつもりはない」。やることといえば振興策というカネ(補償)と公共事業による県民の懐柔と分断。これも復帰後の沖縄で繰り返されてきた手法だ。
今回、沖縄防衛局の埋め立て申請はそうした策に籠絡された名護漁協の埋め立て同意が前提となった。沖縄差別には悲しいばかりの構造性がつきまとう。
嘉手納基地以南の5施設・区域の返還についても、日本は2019年頃の返還を打診、米側は4月下旬に返還計画を提示する模様。だが、既設の基地へ分散されるだけという見方がもっぱらだ。
屈辱の日に大会
心を一つにしてきた県民にとって微妙な時期に、安倍首相はサンフランシスコ講和条約が発効した4月28日に「主権回復」の記念式典を行うと発表した。主権回復とは戦勝国による「押し付け憲法」の回復=自主憲法制定に他ならない。「これほど露骨な民意無視、沖縄切捨ては過去の政権に比較しても突出している」(沖縄タイムス)。今なお基地の固定化と差別を受ける沖縄。米軍統治下に差し出された4月28日を「屈辱の日」として、抗議大会を開く。
沖縄の人々が心を一つにできたのは差別の中、基本的人権を求めて闘い続けてきたからだろう。本土でも闘ってきた少数派が、心を一つにするときだ。
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