衆院憲法審査会が5月9日に開かれ、改正手続き要件を定めた第96条を議論した。構成委員は50人。
自民、民主、日本維新、公明、みんな、共産、生活の7党が出席し、96条改定に対する姿勢を明確にした。自民、維新は賛成、みんなは官僚制度改革が先とする条件付き賛成、共産は反対、生活は中身の議論がなく反対、民主は中身の議論が欠かせないとして慎重、公明は3原則(基本的人権の尊重、国民主権、平和主義)以外の発議要件の緩和は容認して慎重、だった。
憲法改正という改悪論議は、もっぱら政治家と改悪待望メディアがリードしている。中国や朝鮮半島、沖縄、原発などホットな話題も改憲改悪に密接に関連しているのだが、話題提供は断片的だ。
9日の衆院憲法審査会で自民党の船田元氏は、「1回の改正発議と国民投票では全てを改正することはできないから、あらかじめハードルを下げておく必要がある」と言い切った。氏の念頭には自民党改憲草案があるようだ。
94年に憲法改正試案を発表した読売新聞の橋本五郎特別編集委員は、「60年間国民投票法がなかったのは国民の権利を奪う重大な憲法違反」との認識を示した。ならば明治憲法下の56年間に国民にそうした権利はあったのか。現憲法はその明治憲法の下で戦争の大きな犠牲を払った末に手にした人類普遍の英知の結晶なのだ。
作家の池澤夏樹氏も「欧米が時間をかけて培ってきた民主主義・人権思想・平和思想の最先端が敗戦を機に日本に応用された」とフォローする。
押しつけ憲法論には安倍首相の「侵略という定義は世界的にも国際的にも定まっていない」という歴史認識に典型的だが、戦争の反省がない。侵略されたアジア諸国との友好関係を損なう議論だ。
また、押しつけ憲法論には明治憲法を踏襲した松本烝治案がGHQによって拒否されたときのトラウマが染み付いている。1946年2月13日、代わって現憲法案が提示された。この屈辱は自民党綱領に「憲法改正」として刻印され、今日に引き継がれてきた。
安倍首相らの希薄な歴史認識。米国側からも東アジアの不安定要因として懸念され、安倍首相は軌道修正を余儀なくされた。
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