「この事故(福島第一原発事故)の責任を誰もとっていません。そればかりか権力を手にした人たちと一緒になって以前よりひどいことをしようとしています。何も解決していないのに再稼働をしようとし、海外には日本の原発ほど安全なものはないとうそぶいて売ろうとしています。このままでは大人の責任を果たせません」。政府と東電の事故責任を追及する「福島原発告訴団」は5月31日、東京都内で「福島原発事故の厳正な捜査と起訴を求める大集会」を開き、1000名が参加。集会後、東京地検に起訴を求めて「激励」し、東電本社に要請文を提出して抗議した。
原発事故は犯罪
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東電本社前で訴える福島被災者の皆さん |
集会参加者を前に、告訴団団長の武藤類子さんは「犠牲の繰り返しに終止符を打ち、若い世代に責任を果たすために、命の叫びをあげ続けましょう」と呼びかけた。
代理人の海渡雄一弁護士は、「検察は東電本社と福島現地に令状を持って踏み込み、必要な証拠を保全すべきだ。東電には業務上過失傷害の責任をとってもらわなければならない」と行動の意義を説明した。
福島の被災者が次々と声をあげた。「強制避難区域の人、自主避難した人みんな経済的に苦しいのに、復興の中で被災者ではないと思わされています。でも、心の痛みを口に出さないと、思うツボにはまってしまいます。私たちも被曝していますとあらためて訴えます」
「2人の子どもを育て、なぜこんな目に遭ってしまったかとやっと皆さんの前に参加しました。福島のお母さんたちは苦悩の中にいます。ここに来るまで自分の力のなさを反省しました。でも本当に反省しなければならないのは東電と国です」
東電本社に対する抗議は庭内で、前田広報部長を相手に、マイクを取って福島の声を突きつけた。
「私たちは放射能の被害に遭い、家を奪われ、逃げることもできなくて怯えながら暮らしています。収束作業にいそしむ人は自分の命を削りながら、子どもを産めなくなると大変な思いで働いています。東電の皆さんはいつもゴメンナサイと謝って済ませていますが、私たちには届いていません。この叫びを体中で受け止めてください」
「山形から岐阜、この春に長野へ避難しました。夫は生業を奪われ、先の見えない不安を抱え、新しい土地で新しいことを始めるのは予想以上に困難です。何よりも親戚や仲間、築いてきた暮らしを捨てて、悲しい悔しい思いでいっぱいです。私たちの生活を虫けらのように踏みにじり、責任をとらない社会を子どもたちに残すことはできません。ちゃんと罪を償ってください」
福島の女性たちの声に、「しっかりと社内に伝えたい」と繰り返す広報部長。怒りは収まらない。
「東電は福島の怒りを受けよ」「東電役員は恥を知れ」「東電は自首せよ」「東電はすぐに謝罪せよ」「東電は第二の福島を起こすな」「再稼働は許さないぞ」
集会決議
5月31日の「福島原発事故の厳正な捜査と起訴を求める大集会」参加者一同の名で次の「決議文」が採択された。
福島第一原発事故を引き起こし、おびただしい被害をもたらした政府・東京電力の責任を問うため、私たちが福島原発告訴団を結成してから1年が経過しました。この間、明らかになったことは、子どもたちの健康被害、除染の行きづまり、原発労働者の使い捨てであり、収束作業が今なお薄氷の上に立っているという事実です。
事態の根本的な解決が求められているにもかかわらず、政治は経済優先の風潮の中で福島原発事故を風化させ、原発再稼働や輸出への動きを強めています。事故から2年経った今なお、16万人が故郷を思いながら帰ることもできず、新たな生活への展望を持つこともできません。
巨大な事故を引き起こした政府や企業が何の責任を問われなければ、法治国家としての土台は崩れ去り、日本社会の信頼は損なわれます。責任ある日本社会を構築するためには、企業、国の犯罪が正しく追及されることが必要です。
私たちが呼びかけた、厳正な捜査と起訴を求める署名は10万筆を超え、多くの人々がこの不正義に怒りを持っていることを示しました。4月27日の福島原発告訴団の総会では、この事故の責任を追及するためのあらゆる行動を続けていくことを、参加者の総意として確認しました。
私たちの目標は、弱者を守らず切り捨てていく社会のあり方そのものを根源から問うこと、人間をはじめあらゆる生物・環境に被害を与えた者が正しく責任を追及される、新しい日本社会を作り出すことです。そのために私たちは、政府や企業の犯罪に苦しんでいるすべての人たちとつながって、ともに闘っていきたいと思います。
この国に生きる一人ひとりが尊敬され大切にされる新しい価値観を、若い人々や子どもたちに残せるように手を取り合い、立ち向かっていきましょう。
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