原発輸出へなりふりかまわずトップセールスをし、国民の前でも企業・財界の代理人になりきって見せる安倍首相。6月5日、アベノミクス第3の矢=成長戦略の骨格が出揃った。産業競争力会議(議長・安倍首相)が成長戦略の素案を公表、規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が規制改革案を答申、6日には経済財政諮問会議(議長・安倍首相)が予算編成方針となる「骨太方針」素案を公表した。3つの会議に盛り込まれた成長戦略は、14日に閣議決定された。「目標やよし、もっと実効性を」と背中を押す企業・財界が主役であるアベ成長戦略に、労働者・国民は泣きっ面にハチだ。
アベノミクスの正体全開
アベ成長戦略によって賃金は上昇し、家計は潤うというが真っ赤なウソだ。アベ成長戦略は「中長期的に2%以上の労働生産性の向上」により、「今後10年間の平均成長率を各目3%程度、実質2%程度」を目標に置く。その結果、「10年間に1人当たり各目国民総所得が150万円拡大する」と予測する。
労働生産性の向上は、雇用労働者数を含む賃金総額の抑制による企業利潤の増大あってこそ。そして、このモデルの不断の更新が成長率を押し上げる。
また、一人当たり総所得は個人の所得ではなく、あくまでも企業と個人の収入の合計を人口で割った数値。賃金が切り下げられ、それ以上に企業利潤が増大すれば一人当たり総所得は増える。ごまかされてはならない。
アベ首相は「成長の主役は活力ある民間」と言い切り、「民間活力の爆発」を求めた。その起爆剤が規制改革=「企業活動の障害を徹底的に取り除く」こと。
アベ成長戦略は@日本産業再興プラン、A戦略市場創造プラン、B国際展開戦略の3つの柱から成る。
@は3年間で設備投資70兆円の回復、仕事や地域に応じた「限定正社員」制の普及で「失業6カ月以上の人数を5年で2割」減らす、女性労働力も活用へ待機児童解消、租税回避(タクス・ヘイブン)可能な「国家戦略特区」の創設、5年で新たに中小企業1万社の海外展開などの政策が並ぶ。
Aで「岩盤規制」と目されているのが医療と農業。TPP参加に備えて、農業所得を2倍の6兆円に増やし、大規模化へ「集積バンク」制を導入するというが、絵に描いた餅だ。エネルギー政策では原発再稼働を織り込んだ。
BはTPPを推進し、2018年までにFTA(自由貿易協定)比率を70%以上にすることが柱。
「停滞の20年から再生の10年へ」。アベ成長戦略は今後5年間を「緊急構造改革期間」として、7月の参院選でその信を問う。これを許せば、小泉政権に輪をかけた格差と貧困が襲いかかるのは必至。しかも、5年間の長期政権を見越し、念願の96条改憲に着手する計略だ。アベ政治に決別を告げるときだ。
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