内戦が続くシリアで政府軍が化学兵器を使用し、子どもを含む1429人が死亡したとする報告書を公表し、限定的な軍事介入を示唆したオバマ米大統領は8月31日、軍事行使に議会の承認を求め判断を先送りした。世界の世論と各国政府が戦争反対、介入反対になびくなか、米国の態度次第の安倍政権は重大な過誤を犯した。
赤っ恥さらした日本
シリアの反体制派が化学兵器の使用を発表したのは8月21日。国連調査団が現地調査を終えて出国した31日に米国は報告書を公表した。国連調査団が採取した血液や土壌等はオランダ・ハーグの化学兵器禁止機関に運ばれ、分析結果は3週間先に判明する。
米国は国連安保理協議と国連調査団も、軍事介入に反対する米国内外の世論をも無視して独自介入も辞さない姿勢を見せた。しかも報告書は、「推論が多い」と批判され、確かな証拠を隠した代物だ。
このとき、各国政府と世界の世論は、03年のイラク戦争が「大量破壊兵器が存在する」という嘘で始まったことを思い出した。あの戦争でイラク市民と各国兵士100万人が死んだ。その悪夢が後をひく中のシリア戦だ。
米国の盟友である英国の下院が軍事介入を否決した。かつてシリアを委任統治し、反体制派を真っ先に承認したフランスは強硬論の先頭に立つが、ドイツ、イタリア、カナダ、豪州は介入反対だ。
問題は日本。イラク戦争の反省はなく、安倍首相は訪問先のカタールでアサド退陣を促した。米英仏首脳の本音を代弁し、世界に赤っ恥をさらした。
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