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2013.9.17
世界に「復興」の嘘
始まった五輪狂騒 


 2020年の夏季五輪の開催地が東京に決まり、向こう7年間の狂騒の幕が開いた。日本は皇室、政財界、全競技団体が一体となった「オールジャパン」(猪瀬都知事)態勢で臨み、活発なロビー活動を繰り広げて1964年以来56年ぶり、アジアでは初の2度目の開催を手にした。商業主義と国威顕揚の場と化した五輪。日本は「震災復興」を最大限利用し、アベノミクスにはずみをつけた。



 開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会は9月7日(日本時間8日)、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた。対抗都市はトルコ・イスタンブールとスペイン・マドリード。第1回投票で東京は1位となり、決戦投票でイスタンブールと争い、60対36の大差で勝った。
 東京は「強固な財政基盤」「安全・確実な運営」を売りに、開催理念に「復興」を掲げた。イスタンブールは隣国シリアの内戦と国内の政情不安を、マドリードは経済危機というリスクを抱えていた。
 日本のリスクは、東電福島第一原発事故による汚染水問題に集約されていた。7日のプレゼンテーションで、委員から科学的説明を求められた安倍首相は「影響は同原発の港湾内0・3平方`b範囲内で完全にブロックされている。東京には何のダメージもない」「放射性物質の数値は最大でも世界保健機関(WHO)の飲料水水質がガイドラインの500分の1」「健康問題には今までも現在も、将来の問題ないと約束する」と述べ、7年後に「復興を成し遂げた姿を世界中の人びとに発信する」と大見えを切った。
 安倍首相は国際舞台で大嘘を語り、東京招致に賛成した委員と共に世界の善良な市民をたぶらかしたのだ。汚染水漏れ箇所がもぐら叩きのように増え、IOC総会前に政府として470億円の国費投入を一決せざるを得なかったというのが真相だろう。
 安倍首相は、7年後に完全復興の姿を見せると世界に約束した。それは福島の被害者の切捨てを世界に向かって宣言したに等しい。

 五輪に浮かれているときではない。五輪景気をたのみ、アベノミクスへの期待値が一時高まったとしても、経済効果の底は浅い。56年前、華やかな五輪の直後に証券恐慌など破局が襲ったことを忘れてはならない。

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