厚生労働省の労働政策審議会専門部会が12月12日、労働者派遣法見直し骨子案(公益委員案)を示した。「派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする」としながら通訳など専門指定26業務の区分を撤廃し、派遣労働の全面自由化に踏み込むもの。政府は、この労働者の非正規化を究極まで進める「正社員ゼロ法案」=派遣法改定案を来年の通常国会に提出する方針だ。この動きに、労働側は連合、全労連、全労協、純中立が厚労省への抗議で足並みを揃え、12月13日には日本弁護士連合会(山岸憲司会長)の呼びかけで一堂に会し、東京都内で「労働法制の規制緩和と貧困問題を考える市民集会」を開き、集会後、参加者2000人がデモ行進した。
制度見直し案は、@3年としている派遣期間の上限を廃止する。通訳など指定専門26業務区分も廃止する、A派遣労働者が同じ職場で働ける期間は3年とする。派遣先企業は労働組合の意見を聞けば人を入れ替えて派遣を継続できる、B派遣会社に無期雇用された労働者は無制限の派遣を認める、C派遣会社は一職場で3年を迎えた労働者に次の派遣先を提供するなど雇用の安定措置を講じる、というものだ。
これでは「臨時的・一時的な働き方」ではなくなる。企業はあらゆる業務に派遣労働者を充てることができる。派遣元がお客様の派遣先に直接雇用をお願いできるわけがない。労働組合の意見を聞くといっても、企業の言いなりの組合に期待できない。他の仕事を斡旋されてもより劣悪な条件の仕事になる、など見直し案は確実に正社員減らしをもたらす。
今年10月の統計では非正規労働者は1964万人、全雇用者の37・4%に増大した。現行、企業は有期契約が通算5年を超えると無期雇用に転換しなければならない。いつでも雇い止めができる仕組みを求める企業にとって、派遣労働の全面自由化は天の恵みだ。
労働の非正規化は貧困問題を深刻化する。日弁連は生活保護が増え、子どもの貧困率の上昇を懸念。今年9月時点の生活保護は159万911世帯215万9808人。とくに65歳以上の生活保護が71万6999世帯に増えている。
労働法制の規制緩和は目白押し。解雇の金銭解消制度の導入、限定正社員制度の導入、残業代ゼロのホワイトカラー・エグゼンプションが産業競争力会議などで検討中だ。12月7日に成立した国家戦略特区法に基づき、有期雇用の期限を10年延長が検討される。
集会では、マツダ派遣切り訴訟原告団らが「働いても、働いても生活が良くならない」実態を訴えた。全港湾の伊藤彰信委員長は「派遣法は廃止すべきだ」と主張した。
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