1月開会の通常国会に提出される14年度予算案は、アベノミクス実行・アベカラーを露出した。安倍首相は「経済再生と財政健全化の好循環に光が見えてきた。来年は正念場」と誇らしげに語った。好循環を担保するのは17年ぶりの消費税増税と庶民に増税・年金保険料などの負担増を押し付け、企業を減税などで後押しするいわば「1%と99%」の格差の徹底だ。こうした企業・軍事重視の予算案を福祉・民生重視へ丸ごと組み替えが切実な課題となる。
安倍首相のいう好循環は経済成長を最優先し、デフレ脱却を目指すアベノミクス論が基本にある。政府の財政出動により企業の競争力を強めて利益を増やせば法人税収入が増え、労働者の賃金も上がって消費(内需)が拡大し、経済は再生するという議論だ。
この財政出動を担保するのが消費税増税なのだ。間もなく4月に8%へ、来年10月には10%への引き上げを見越し、安倍首相はこの増税による税収増見込みをもって財政健全化とうそぶく。
政府は4月増税で国民消費の減退、景気の後退を予測(13年度2・6%、14年度1・4%)し、3%増税分をそっくり13年度補正予算案(5・5兆円規模)に組み入れた。こうした景気の先行き不透明感があるために、昨年12月の月例経済報告は4年ぶりに「デフレ」の言葉を消したものの、「デフレ脱却」は先送りし、「デフレ脱却の過渡期」と位置づけた。
以上の枠組みにより、一般会計は95兆8823億円と前年度当初予算比3・5%増の最大規模となった。新規国債発行額は41兆2500億円。前年度より1・6兆円(3・7%)の減、一見「引き締まった予算案」(財務省)になった。
しかし、財投債や借換債、復興費を含む14年度国債発行計画は181兆5388億円と大幅増。また、国債返済に充てる国債費は前年年度より1・1兆円増える。その結果、14年度末の債務残高は1000兆円を超え、GDP比2・4倍超と世界一の借金国となり、財政健全化には程遠い。
そこで安倍予算案は露骨なまでに「企業に減税、庶民に増税」策を採用した。バラマキの代名詞である公共事業費は12・9%増。災害対策、道路・港湾・空港整備、整備新幹線建設費などの中でも、東京五輪関連企業費が目立つ。
安倍予算案の極めつきは、国民の消費拡大を当て込み、企業に賃上げを促すための税制措置を盛り込んだことだ。賃上げ企業に法人税減税を拡充、中小企業に設備投資費用を援助する。13年度補正予算案では賃上げ企業に投資支援、低利融資が行われる。
さらに、労働移動支援助成金を大企業にも適用して1・9億円から一挙に301億円に増やす一方、11年度には1兆円超あった雇用調整助成金を544億円に縮減する。雇用対策費を「労働維持型」から「移動(流動化、多様化)支援型」へ転換し、企業の人件費圧縮とリストラを財政援助する。
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