新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 今週の新社会
  4. 2014.02.04
2014.02.04
 通常国会 施政方針演説
「成長」と「戦争」が一体


 第186回通常国会が開会した1月24日、安倍首相は施政方針演説を行い、「好循環実現国会」と位置付けて14年度予算案をはじめ重要法案の成立へ「やればできる」を連発した。しかし、国内では名護市長選の敗北、東京都知事選で広がった脱原発の政治気運、4月実施の消費税増税と不安定要因を抱え、国外からは靖国神社参拝に加え日中武力衝突を想定したダボス会議発言が重なり、首相の反民主主義的体質を懸念する国際世論の向かい風を受けて、政権がいつ失速してもおかしくない状況のなかで強気の演説となった。


 就任以来、安倍首相の施政方針はデフレ脱却・景気回復を表看板に戦争国家への態勢づくりを進める2枚看板が特徴だ。アベノミクス一の矢(大胆な金融緩和)と二の矢(機動的な財政出動)が好調に滑りだし、三の矢(成長戦略)が決定打を欠いていた。昨年秋の臨時国会を「成長戦略実現国会」と命名しながら、見通しが立たないまま年を越した。
 三の矢が失墜すれば、安倍政権の存在基盤は崩壊する。首相の最高の政治目標である憲法改定へ、臨時国会の日本版NSC設置法と特定秘密保護法の制定に続き、今国会では集団的自衛権行使の容認へ、国家安全基本法の成立を目標に改憲に代わる憲法解釈変更に踏み出した。


 成長戦略は、3本の矢によって日本経済は「自信」を取り戻しつつあるという認識が前提だ。そして、次のステップとしての「経済の好循環」は企業の競争力強化の成否にかかっているとする。
 その内容は企業の投資を促し、農業や社会保障分野での企業活動を活発化し、戦略特区の地域指定を行い、製造業中心の輸出企業の収益拡大を図り、その中で労働者の賃上げを促し、消費の拡大を実現するというものだ。
 この構想の障害となるのが消費税増であり、推進エンジンは政労使の一致協力態勢「チーム・ジャパン」。増税リスクは、5・5兆円の補正予算によって回避する。また、「チーム・ジャパン」を踏み台に規制緩和がさらに進むと見込む。
 具体的には設備投資・研究開発減税、復興特別法人税の廃止、法人実効税率の2・4%引き下げ、女性労働力の活用、アジアインフラ市場の獲得、IT・ロボット開発など「世界で最もイノベーションに適した国」づくり、アジア太平洋経済圏を念頭においたTPP、同時に農業の減反廃止と規模拡大、防災・減災による国土強靭化など、全ての政策を成長戦略に収斂。関連法案だけで32本になる。


 原発再稼働も成長戦略の一環だ。演説は従来のエネルギー政策をゼロベースで見直すと宣言。「原子力規制委員会が定めた世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り原発の再稼働はありません」と見栄を切る。だが、「世界でも最も厳しい水準の安全規制」は嘘、規制委員会は正義の味方ではない。
 教育や沖縄でさえも成長戦略に組み込まれている。国家に従順な道徳を備えた子どもたちの学力と英語によるコミュニケーション能力の向上はグローバル人材の育成が目的だ。沖縄はアジア物流のハブとして、また、21世紀の成長モデルとして毎年3000億円台の振興予算を投入する。
 成長戦略のメダルの裏は、集団的自衛権の行使を容認した「積極的平和主義」の展開である。それは「世界が頼りにする自衛隊」と米軍の日米同盟基軸論を再確認し、「自由と民主主義、人権、法の支配の原則が世界に反映をもたらす基盤」と資本主義を礼賛した。
 尖閣諸島を巡り紛争状態にある中国には防衛大綱のもと、「毅然かつ冷静」に対応し、関係改善に努力するとした。沖縄の普天間基地の速やかな返還へ名護市辺野古への移設に言及し、オスプレイの飛行訓練の県外移転は努力条項にとどめた。
 安倍首相は国家主義者らしく、「全ては国家のため」との信念で「憲法改正」を進めると演説を結んだ。

 宇都宮けんじ都知事候補(中央)を応援する新社会党の長南博邦書記長(左端)ら=1月23日告示日、新宿駅西口


 ↑上にもどる
一覧へ
TOPへ