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2014.02.18
失格!NHK経営委員
首相・国会の責任


 NHKを安倍政権の右傾思想が蝕んでいる。その就任会見が原因で国会に参考人招致された籾井勝人会長に続き、経営委員の百田尚樹(57歳、作家)、長谷川三千子(67歳、埼玉大学名誉教授)両氏の、無軌道な右翼的言辞が公けになり、経営委員としての資質に危険信号が灯った。結局のところ、このようなトンデモ人物を推薦、任命、同意した安倍首相と国会の責任こそが問われている。


 百田委員は2月3日、都知事選で元航空幕僚長の田母神俊雄候補の応援演説を行い、持論を繰り返した。たとえば、原爆投下や東京大空襲(1945年)は「悲惨な戦争犯罪」であり、「東京裁判は大虐殺をごまかすための裁判だった」、南京大虐殺(1937年)も「東京裁判で突然、亡霊のごとく出てきた。米軍が自分たちの罪を相殺するためだ」と日本近代史の修正に力点を置いた。
 そして、「確かに戦争だから残虐行為はあった。日本軍も残虐なことをした。でも、これは米軍もしたし、ソ連もしたし、中国人もした。どこの国もした。これは歴史の裏面、黒い面だ」と他国の例を引き、日本の戦争犯罪を免罪した。
 百田演説を聞きその経営委員としての資質を疑問視する世論が高まると、百田委員は「思想信条の自由。(放送法は)プライバシーな行動まで縛る法律ではない」と開き直った。確かに放送法では、委員個人としての活動は制限していない。
 しかし、同法第31条は経営委員について「公共の福祉に関し公正な判断をする者の中から総理大臣が任命する」と条件づけている。問題は、「公正な判断」が時々の首相に委ねられ、衆参が総保守化した今の国会にチェック能力があるのかということにある。その場合、「国家統制からの自立」の度合いと兼ね合いが問題になるが、安倍首相は断固「統制強化」に向いている。
 もう一人の長谷川委員は日本文化論が専攻。出生率低下の原因は女性の社会進出にあるとして、女性は育児に専念せよと説く男女共同参画否定論者だ。
 長谷川委員は、1993年に朝日新聞東京本社に乗り込み、「朝日と刺し違える。すめらみこと、いやさか」と叫んで拳銃自殺した野村秋介(当時58歳)の没後20年追悼集会(昨年10月、右翼「大悲会」主催)のパンフレットに追悼文を寄せていた。そこには「野村秋介は神にその死を捧げた…彼がそこに呼び出したのは…自らも現御神であられる天皇陛下であって…今上陛下は(「人間宣言」が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現人神となられた」と書かれている。
 長谷川委員は「個人の活動で何をしようと関係ない」と、百田委員と同様の見解を述べた。事件の顛末について菅官房長官は、「経営委員が自らの思想信条を表現することは妨げられていない」と弁護した。
 安倍首相も、籾井会長の発言に関して「会見で個人的な発言をしたことは不適当」と国会答弁したが、百田、長谷川両委員の場合も、思想そのものへの波及は押さえた。


 安倍政権のもと 文化思想も右傾


 百田発言の根底には「自虐史観」からの脱却を目指す歴史認識がある。戦後、連合国軍によって植え付けられた「日本を愛さない自虐思想」は外交、防衛、憲法を蝕み、憲法改定などに冷静な論議を妨げていると見る。
 百田委員の演説は、安倍首相との共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』に全て網羅されている。それによると安倍首相との出会いは雑誌『WiLL』(11年9月号)に「さらば売国民主党政権」を寄稿したのが因縁。その中で、「安倍晋三に再登板してほしい」と書いたのが安倍氏の目に留まった。百田委員は、「私が安倍を高く評価するのは彼が正しい『歴史認識』と確固とした『国家観』を持っているからに他ならない」とベタホメ。
 呼応し、安倍首相は「右傾化小説」と評判の『永遠のゼロ』や本屋大賞を受賞した『海賊と呼ばれた男』を読み、「百田さんの小説の大きなテーマは『他者のために自らの人生を捧げること』ではないか」と共鳴する。
 長谷川委員は、一部の右翼団体の間では「保守論客で最も尊敬する学者の一人」という評価を受け、著書『神やぶれたまはず』は教本扱いされている。



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