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 2014.07.15
憲法9条に風穴
安倍内閣を倒そう


 安倍政権は自衛隊創設60周年に当たる7月1日、海外で他国と戦争ができる法整備へ、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定した。戦後、平和主義を原理とする憲法の下で専守防衛を国是としてきた安全保障政策を根底から覆す暴挙に、反対・危惧する意見が過半数を超える国民世論は「閣議決定反対」から「関連法案阻止」、さらに「安倍内閣打倒」へ動き出した。新社会党は同日、閣議決定は「改憲クーデターに等しい」として、「戦争をさせない1000人委員会」をはじめ改憲反対の共同闘争を組織しようと呼びかける「声明」を出した。


 憲法9条を廃棄する閣議決定は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」が標題。「国の存立を全うする」「我が国の平和と安全を維持する」「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」という決め台詞が文中に14回、閣議後の首相会見では13回も多用された。


 9条の抑止力


 戦後69年間、世界有数の実力を保有するに至った自衛隊が1人も殺し殺されないできたのは、憲法9条の制約があったからこそ。9条は自衛隊の海外での武力行使を禁じ、最高の安全保障の機能を果たしてきた。
 安倍政権はこの歴史的事実を障害とし、憲法解釈上の論理を覆した。抑止力は「万全の備え」をすること、国際協調主義に基づいて戦争の企みを挫くことが「積極的平和主義」だと言葉のすり替えで国民を欺いた。
 与党協議を仕切った高村正彦自民党副総裁は、閣議決定は「憲法解釈の適正化」とうそぶき、横畠裕介内閣法制局長官は「憲法解釈として可能な範囲内」と追認、安保法制懇の北岡伸一座長代理は、憲法がある限り今回の解釈見直しは「巨大な変化ではない」と改憲へ意欲を示した。


 なぜ見直しか


 なぜ憲法解釈の見直しが必要なのか。閣議決定はその理由として、「我が国を取り巻く安全保障環境の根本的変容」を強調する。具体的に、「グローバルなパワーバランス」をあげて一国平和主義を否定。名指しこそ避けたが、アジア太平洋地域で緊張を生み出している中国、朝鮮民主主義人民共和国を想定し、米国の軍事力、世界の警察としての役割の低下を示唆した。
 こうした情勢認識から、米国との相互協力の強化、域内外のパートナーとの協力の重要性を強調する。豪、印、フィリピン、インドネシアなどの域内を超えて中東、欧州との軍事的協調を視野におく。


 首相の欺瞞性


 閣議決定はかろうじて集団的自衛権の行使を否認してきた歴代政府の「自衛権発動」の三要件(72年に明示)について、「基本的な論理は憲法9条の下では今後とも維持される」と誤魔化しながら新三要件を盛り込んだ。
 ポイントは「わが国と密接な関係にある他国」「わが国の存立が脅かされ」「明白な危険がある場合」。多義的でいかようにも解釈可能な余地を残した。安倍首相は「日本が戦争に巻き込まれることはありえない」「外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行わない」「日本が戦後一貫して歩んできた平和国家としての歩みは今後とも変わることはない」と述べたが、自己欺瞞以外の何物でもない。何も変わらなければ憲法解釈を見直す必要はない。


 軍事費増額へ


 憲法9条に風穴を開けた安倍政権は、来年の通常国会で自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、海賊対処法、PKO協力法など十数本の関連法の改定を行う予定だ。それに先立ち防衛費の増額を予定する麻生財務相は、閣議決定の日に「抑止力を効果ならしめる予算を組まないといけない」と述べた。それにしても消費税の再増税、福祉予算削減とセットだ。
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