米国など他国の戦争に参加する集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍政権は、年末の日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定によって外堀を埋めてから来年の通常国会で関連法案を整備する方針に転じた。日米同盟を憲法や法律の上位におく政権の姿勢は国会軽視となり、7月14、15日の衆参予算委員会における集中審議の政府答弁はおざなりの一語に尽きる。国会前では「戦争をさせない1000人委員会」などが呼びかけて抗議の座込みが行われた。
17年ぶりの再改定となるガイドラインは「日米同盟のグローバルな性質を反映させるため」、日米双方の役割分担を見直し、「より大きな責任の共有」が合意されている。
ガイドラインは1978年11月に旧ソ連の北海道侵攻に備えて、共同作戦の分担を明記して策定された。次いで97年9月に改定された新ガイドラインは、朝鮮半島有事を想定し、日本の周辺地域の事態に対処する性格に変わった。
旧ガイドラインは「自衛隊の有事研究は国の義務」とする福田赳夫内閣の下で策定。その見直しは橋本龍太郎内閣が取り仕切り、99年にその根拠法として周辺事態法などが制定された。
今年12月に予定されているガイドライン再改定は、憲法9条の制約により行使を認められてこなかった集団的自衛権の閣議決定を契機に、旧ガイドラインとは質的に異なる「野心的で前向きなもの」となる。その日米協力の範囲はテロ対策、海賊対策、平和維持、人道支援・災害救済、装備・技術の強化、宇宙・サイバー空間などよりグローバルな展開が計画されている。
安倍政権は9月の内閣改造で安全保障法制担当相を置き、民生・災害救助の名目で軍事関与を認める方向でのODA(政府開発援助)大綱の見直し、国家安全保障宇宙戦略(日本版NSSS)の策定も再改定ガイドラインに基づいて検討中だ。
安倍首相は、集団的自衛権の閣議決定=積極的平和主義による安全保障政策の支持を取り付けるために、中国の進出に対抗してニュージーランド、豪州、パプアニューギニアを訪問した。豪との間では防衛装備品・技術移転協定に署名、自衛隊と豪軍の連携を強化する新協定締結交渉を共同声明に盛り込んだ。
一方、小野寺防衛相は、離島防衛へ強襲揚陸艦、ステルス最新鋭戦闘機F35、オスプレイの国内配備へ米国を訪問し基地、工場などを視察した。そして、ヘーゲル国防長官と会談し、ガイドラインに集団的自衛権を反映させることで合意。ヘーゲル長官は「画期的な形での改定が可能となる」と歓迎した。
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